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「未避妊の犬は発情期後に要注意!」子宮蓄膿症のサインや症状、気をつけること【動物看護師が解説】

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「子宮蓄膿症(しきゅうちくのうしょう)」という病気をご存じでしょうか。

「避妊手術を受けていない犬は注意してね」とよく言われる病気ですが、この病気は発情期が終わった後に発症の可能性が高くなります。

そこで今回は、「発情期の後に注意が必要な理由」や「子宮蓄膿症になった時のサイン」などを解説していきます。

「うちの子、まだ避妊手術受けていないの」という飼い主さんは、ぜひ最後までご覧ください。

「発情期の後は子宮蓄膿症に要注意!」その理由は?

まず犬の発情期の流れをみていきましょう。

犬の発情期は下記の図のような流れで進んでいきます。

注目してほしいのが「発情休止期」です。

この「発情休止期」には「黄体(おうたい)」という組織が作られ、妊娠を維持するのに必要な「プロゲステロン」というホルモンを出します。

「プロゲステロン」が出されると、子宮は精子を受け入れやすくするために免疫力を落としたり、子宮と膣の間を閉じたりと妊娠の準備をせっせっとおこないます。

しかし妊娠をしていない場合、これが裏目に出てしまいます。

免疫力が低下したことで菌が侵入しやすくなり、閉じられた子宮内は菌が増殖しやすい環境になります。

これが子宮蓄膿症をまねきやすくなります。

そのため、黄体ホルモンの影響がある「生理後の約2か月間」は特に子宮蓄膿症への注意が必要です。

「子宮蓄膿症」ってどんな病気?

では、次に子宮蓄膿症がどんな病気なのかをくわしく見ていきましょう。

子宮蓄膿症は子宮内に侵入した菌が増殖して炎症が起こり、膿が溜まってしまう病気です。

▼子宮蓄膿症の模式図(右側が正常な子宮、左側が子宮蓄膿症です)

そして子宮蓄膿症の恐ろしい所は、進行すると「敗血症(はいけつしょう)」や「子宮破裂」を引き起こすことです。

▼「敗血症」ってどんな病気?
菌や菌が出す毒素が血管を通じて全身をめぐり、肝臓や腎臓などの臓器の機能に影響を与える病気です。ショックが起きたり重症化すると死に至ります。

▼子宮が破裂するとどうなる?
子宮の中に溜まった膿や菌の毒素がお腹の中に漏れ出て「腹膜炎(ふくまくえん)」を引き起こします。処置が遅れれば死に至る可能性が高くなります。

どちらも命の危険がある恐ろしい病気です。

一見元気そうに見えても実は進行している場合も多く、数日で容体が悪化することもあるため、症状やサインを見落とさないようにすることが大切です。

「子宮蓄膿症」の症状やサインは?

では、子宮蓄膿症にかかると、どんな症状やサインが現れるのでしょうか。

以下の症状が出てきたら注意をしましょう。

▼子宮蓄膿症の症状、サインは?
・水をたくさん飲むようになった
・おしっこをたくさんするようになった
・元気がない
・食欲がない
・熱がある
・お腹が膨らんでいる、張っている
・お腹を触ると嫌がる

また、覚えていてほしいのが子宮蓄膿症には「開放型」と「閉鎖型」の2パターンがあることです。

▼「開放型」子宮蓄膿症とは?
膣と子宮の間の管が開いているので、陰部から膿が体外に漏れ出ます。
そのため、閉鎖型に比べると子宮破裂のリスクは下がります。
「陰部から何か垂れている」「匂いがする」「よく舐めている」など異変が目につくので、比較的発症に気が付きやすいです。

▼「閉鎖型」子宮蓄膿症とは?
膣と子宮の間の管が閉じているので、体外に膿が流れず子宮内に溜まっていきます。
膿でお腹がふくらみ、お腹を触られるのを嫌がるといった仕草が見られます。
先ほどお話しした「敗血症」や「子宮破裂」のリスクが高いのが、こちらの子宮蓄膿症です。

「閉鎖型」の子宮蓄膿症の場合、異変が目につきにくいため発見が遅くなるだけでなく、子宮破裂の可能性もあります。

処置が遅れれば一気に死亡率が高くなるので、「なにかおかしい」と感じたらすぐに動物病院に行くようにしましょう。

飼い主さんが気をつけるポイントは?

それでは飼い主さんがこれからの生活で、愛犬を守るために気をつけるポイントは何でしょうか。

ポイントを「3つ」にまとめました。

▼飼い主さんが気をつける「ポイント3つ」
①早期発見につとめる
➁避妊手術を検討する
➂子宮蓄膿症になったら外科手術を検討する

①早期発見につとめる

「子宮蓄膿症ってどんな病気?」の所でもお話ししましたが、子宮蓄膿症は発症すると、敗血症などの合併症のリスクが高い病気です。

特に「閉鎖型子宮蓄膿症」は異変が目につきにくいので「水をよく飲むようになった」「なんとなく元気がない」など、普段と行動が変わっていないかをよく観察して、早期発見につとめましょう。

➁避妊手術を検討する

犬の子宮蓄膿症の発症傾向を調べた調査によると、出産を経験していない高齢犬(10歳以上)が一番発症率が高いという傾向が出ています。

高齢や持病が出てからだと手術のリスクはどうしても上がってしまうので、体力がある時期に避妊手術を検討することも大切です。

その際「今後出産させる予定」と「避妊手術のリスク」はしっかり考えて決めるようにしましょう。

➂子宮蓄膿症になったら外科手術を検討する

子宮蓄膿症の治療には、「外科手術」と「内科療法」の2パターンあります。

そう聞くと麻酔リスクのない「内科治療」を選びたくなりますが、改善率は100%ではなく今後発情が起こるたびに再発のリスクにさらされることになります。

手術を受けられない事情がないのであれば、外科手術を検討する方がよいでしょう。

子宮蓄膿症は動物病院ではよくみるといっていいほどポピュラーな病気ですが、進行も早く合併症を引き起こすことも多い危険な病気です。

早期発見が何よりも大事ですので、愛犬の避妊手術がまだという方は、今回ご紹介した内容を参考にして日常管理に役立ててくださいね。

<参考URL>

犬子宮蓄膿症の発症傾向とその要因
>https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvma1951/36/6/36_6_310/_article/-char/ja/

<参考書籍>

イラストでみる犬の病気

小動物獣医看護学 小動物看護の基本と実践ガイド 上下巻

<画像元>

Unsplash

illust STAMPO

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伊藤さん

伊藤さん

・倉敷芸術科学大学 生命動物科学科卒業
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手

やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。

大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。

愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。

「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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