犬の耳はトラブルが起きやすい場所だと言われています。
そのため、耳のケアに力を入れているという飼い主さんも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、犬の耳のケアに関する疑問を「4つ」解説していきます。
飼い主さんが悩みがちな「耳毛って抜いた方がいいの?」や「そもそも耳掃除は必要?」といった疑問を解説していくので、愛犬の耳のケアに興味がある方はぜひ最後までご覧ください。
<目次>
犬の耳のお手入れの疑問①「耳掃除」ってしたほうがいいの?
犬の耳の構造を理解すると「犬に耳掃除が必要か」が見えてきます。
犬の耳の構造は、下の図のようになっています。
▼「犬の耳の構造」(左の図)と「耳垢の排出構造」(右の図)
上図を見てみると「耳垢の上皮移動(耳垢は自然に排出される)」と書かれていますね。
耳には汚れを自分で外に排出していく自浄作用があります。
そのため健康な子であれば、耳掃除をしなくても汚れが自然に外に出ていきます。
その汚れが耳介(左の図のピンクの部分)まで出でくるので、濡らしたコットンで拭き取る程度のお手入れでOKです(耳孔から先は掃除しない)。
間違った耳掃除を行ったり、頻繁に掃除をすることによって、かえって外耳炎などのトラブルを引き起こしてしまうことがあります。
毎日掃除をしないといけないほど耳が汚れているのであれば、耳の自浄作用が働いていない可能性があります。
掃除の頻度をあげるのではなく、動物病院に行って検査を受けましょう。
犬の耳のお手入れの疑問➁「綿棒」を使った耳掃除は間違い?
人で耳掃除に綿棒を使用するのは良くないと言われていますが、犬も同様です。
せっかく耳介まで出できた汚れを奥に押し込んで詰まらせてしまうリスクがあるだけでなく、耳の中を擦ることによって炎症を起こし、かえってトラブルを招いてしまいます。
実際に綿棒で掃除を繰り返したことによって外耳炎を悪化させてしまった事例が動物病院で報告されています。
下記URLで紹介されているので、興味がある方はご覧ください。
掃除目的で綿棒を使用するのは止めましょう。
綿棒を使って耳掃除は良くないの?? 学芸大学ペットクリニック
>https://www.gakugeidai-vet.com/blog/2017/1488/
耳介(最初に紹介したピンク色の部分ですね)のヒダが入り組んだ部分の汚れをとったり、耳垢の検査のために動物病院で綿棒を使用することはあります。
でも耳孔(耳の穴)の掃除目的で使用することはありません。
実はサロンなどで綿棒を使った耳掃除を行ったことによって、耳の状態が悪化したり外耳炎が引き起こされる事例がクローズアップされており、動物病院から注意喚起がでています。
メンテナンスの一部として考えられがちな「耳掃除」ですが、デリケートな場所なので正しい知識をもった専門家に指導してもらうことが大事です。
犬の耳のお手入れの疑問➂「耳毛抜き」ってした方がいいの?
トリミングの定番となっている耳毛抜きですが、最近皮膚科や耳科の獣医師さんの間では「状況に合わせて判断する」「むやみに抜くのはオススメしない」といった意見が上がってきています。
どうして「耳毛」を抜いたらよくないのでしょうか。
▼耳毛はむやみに抜かない方がいい理由
・異物の侵入が防ぎにくくなる
・抜くことによって耳の中にダメージを与える
・耳にトラブルが起きている場合、抜く刺激でより悪化してしまう
・犬が痛い思いをする
・短く毛をカットでも対応できる
耳毛には異物の侵入を防ぐ働きもあります。
耳毛を抜くことによって、砂や植物などの異物がかえって耳の中に入りやすくなってしまいます。
また、毛を抜くと痛みもありますし刺激も受けます。その刺激でかえって炎症を起こしてしまったり、起きているトラブルをより悪化させる可能性があります。
実は「外耳炎の原因」は耳毛ではなく「食物アレルギー」や「アトピー」、「異物」などが原因だと考えられています(下の記事で詳しく解説しています)。
「外耳炎になりやすい」「繰り返してしまう」のであれば、耳毛抜きよりも根本的な原因を付き止めることが大切です。
耳毛が耳垢の排出を妨げていたり、汚れがこびりついて薬の浸透を邪魔している場合には耳毛の処置は必要ですが、短くカットでも通気性は確保できますし、抜くときの痛みや炎症のリスクを考えると「絶対抜く」以外の選択肢も考えてあげたいですね。
犬の耳のお手入れの疑問④お家で「耳洗浄」はやってもいいの?
自己判断で耳洗浄をするのはオススメしません。
理由は「2つ」あります。
▼自己判断での耳洗浄はNG
①耳の状態を詳しくチェックする必要があるから
➁洗浄液が愛犬に合っていないとトラブルを起こすから
①耳の状態を詳しくチェックする必要があるから
もし鼓膜に傷がついた状態で耳洗浄を行ったり、耳を強くもみこんでしまうと、鼓膜が破れたり摩擦で炎症がよりひどくなってしまうことがあります。
そのため獣医師さんは、耳の状態を細かく検査してから耳洗浄が必要かどうかを判断します。
➁洗浄液が愛犬に合っていないとトラブルを起こすから
洗浄液にもいろいろ種類があり、耳の状態や犬の体質によって使用できる洗浄液の種類が変わります。
耳に炎症が起きている子やアルコールに反応しやすい子にアルコールが含まれている洗浄液を使用すると刺激で炎症がよりひどくなります。
また、鼓膜に傷がついているときに使用すると、聴覚に影響がでる洗浄液もあります。
そのくらい洗浄液の選択は注意が必要なので、自己判断で選ぶのはやめましょう。
「犬に耳掃除って必要ですか?」の所でもお話ししましたが、耳には自浄作用があるので、トラブルが出ていない耳に対して積極的な洗浄は必要はありません。
耳洗浄が必要ない耳を頻繁に洗浄することでかえって、トラブルをまねくこともあります。
耳洗浄が必要かどうかは獣医師さんの判断をあおぎましょう。
愛犬の耳を綺麗に保つために、洗浄やお掃除を頑張ろうという熱意は素晴らしいです。
でもその熱意が間違った方に向かうと、逆にトラブルを引き起こしてしまいます。
耳はトラブルが起きやすい場所なので、正しいケア方法を覚えていきましょう。
<参考書籍>
アジア動物スキンケア検定 公式テキスト 動物スキンケア実践ガイド 岩﨑 利郎 (著)
<参考URL>
耳科診察 サーカス動物病院
>https://circus-ah.com/dermatology/otology/
耳掃除っているんですか?芸術大学ペットクリニック
>https://www.gakugeidai-vet.com/blog/2019/2076/
動物専門医が指摘する「間違った犬のケア」とは? 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/20171201-OYT8T50015/
犬の耳ケアについて –原因&洗浄方法
>https://magazine.vdt.co.jp/3105/
クロルヘキシジングルコン酸塩液 医薬品インタビューフォー ム
<画像元>
写真AC
Unsplash
illust STAMPO
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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