人が夏は食中毒、冬は風邪に備えるように、季節が移り変わると「犬がかかりやすい病気」や「気をつけなければならないこと」も変わります。
今回は、春から夏にかけてよく動物病院で診察される病気を「5つ」紹介します。
この機会にぜひ覚えて、これからの季節の健康管理に役立ててくださいね。
<目次>
春から夏に気をつけたい犬の病気①「皮膚病」
春から夏にかけて、犬の皮膚トラブルで動物病院を訪れる飼い主さんがグッと増えます。
どうして、春や夏に皮膚トラブルを起こす犬が多くなるのでしょうか。
▼どうして春から夏に皮膚トラブルが起こりやすいの?
・高温多湿の環境で菌が増殖しやすい
・高温多湿の環境は皮脂や汗の分泌を活発にする
・紫外線やクーラーなどで皮膚が乾燥しやすい
・アレルゲンとなる植物や虫の動きが活発になる
ムシムシとした高温多湿の環境は、皮脂や汗の分泌を活発にしてかゆみを引き起こしたり、菌を増殖させやすくします。
また、強い紫外線やクーラーの乾燥は皮膚の乾燥をまねき、皮膚のバリア機能を低下させてしまいます。
アレルゲンになりやすい花粉やノミなどの動きが活発になるのも、春からです。
つまり、春から夏にかけて皮膚病が多いのは、皮膚病なりやすい条件がズラっとそろっているからなんですね。
では、皮膚病が増える季節を迎えるにあたって、飼い主さんができることはなんでしょうか。
▼「皮膚病」を防ぐために、飼い主さんができること
・皮膚の状態や犬の仕草をこまめにチェック
・毎年皮膚トラブルを繰り返す子は早めに動物病院へ
・犬の生活環境を清潔に保つ
・ブラッシングをこまめにする
・保湿をする
皮膚が弱い子や毎年皮膚トラブルを繰り返す子は、春先に症状が悪化しやすいので「なにかおかしい」と感じたら、すぐに動物病院に行くようにしましょう。
また、アレルゲンの原因となりやすい「花粉」や「ハウスダスト」を掃除やブラッシングで犬の生活環境から取り除いてあげるのも、飼い主さんができる大切な予防法です。
また、皮膚のバリア機能を正常に保つために、保湿も取り入れてあげましょう。
「犬の保湿の大切さ」は下の記事で詳しく解説しているので、よかったら合わせて読んでみてくださいね。
春から夏に気をつけたい犬の病気➁「外耳炎」
外耳炎も春から夏にかけて、注意が必要な病気です。
先ほど高温多湿な環境が皮膚病を引き起こすとお話ししましたが、同じく外耳炎も高温多湿な環境が発症の引き金になることがあります。
▼外耳炎ってどんな病気?
耳の入り口から鼓膜までを「外耳(がいじ)」といい、そこに起きる炎症を「外耳炎(がいじえん)」といいます。
犬に多い病気ランキングの2位に上がるほど、よくみられる病気です。
外耳炎のやっかいなところは、「1度発症すると繰り返しやすいこと」と「慢性化しやすいこと」です。
「炎症を治せば良いのでは?」と思われるかもしれませんが、下の図のように外耳炎の原因はいろいろとあり、中には原因に別の要因が重なることで、治りにくい外耳炎を作ってしまうことがあります(別の記事で詳しく解説しているので、興味がある方は合わせて読んでみてください)。
それでは、これからの季節に外耳炎を予防するために、飼い主さんができることはなんでしょうか。
▼「外耳炎」予防のために飼い主さんができること
・耳をこまめにチェックする
・入浴や水泳をしたら耳をしっかり拭く
・綿棒を使った耳掃除をしない
・良質な食事と生活環境で免疫をしっかり保つ
・耳毛を短くカットする
(耳毛は異物の侵入を防ぐ効果もあるのでカットは獣医師さんに相談)
頭を頻繁にふったり、耳を気にする素振りをしていないかなど、愛犬の仕草や耳をこまめにチェックしておきましょう。
また、耳には汚れを自分で外に押し出す自浄作用があります。
耳の穴をゴシゴシ擦ったり綿棒を使った掃除は、汚れを奥に押し込んだり耳の中を傷つけてしまうおそれがあるので、やめましょう。
春から夏に気をつけたい犬の病気➂「アレルギー」
春から夏にかけては「アレルギー」にも注意しておきましょう。
アレルギーと聞くと「季節は関係あるの?」と感じるかもしれませんが、犬のアレルギーは主に「3つ」に分けられます。
これからの季節に注意をしたいのは「アトピー性皮膚炎」と「ノミアレルギー」です。
「アトピー性皮膚炎」は、環境中の抗原(花粉や植物など)にアレルギー反応を示し、主に皮膚に症状が現れます。
「ノミアレルギー」はノミに噛まれることによって起こる刺激とノミの唾液には反応しておこるアレルギーです。
春から夏にかけては、花粉も多く飛びますしノミの動きも活発になるので、しっかりと対策をとって予防につとめましょう。
▼「アレルギー」予防のために飼い主さんができること
・ノミの駆虫対策を忘れずにする
・草むらに入るときは寄生されない工夫をする
・室内のこまめな清掃
・体を拭いて花粉の付着を減らす
ノミは草むらに潜んでいます。
散歩やアウトドアの際は駆虫対策を行うとともに、服をきせてノミに噛まれにくくするなど、工夫をしてあげましょう。
また、外出から帰ったら体を軽く拭くなど、花粉の付着を減らしてあげることも大切です。
春から夏に気をつけたい犬の病気④「食中毒」
気温があがると気をつけなければならないのが「食中毒」です。
食中毒は1年を通して発症する病気ですが、高温多湿な環境は食べ物や水が傷みやすく、菌が増殖しやすいので梅雨から夏にかけては特に注意が必要です。
▼「食中毒」予防のために飼い主さんができること
・食べ残しはすぐに破棄する(特にウェットフード)
・ドライフードは多湿の場所(流しの下など)に保管しない
・水は最低、朝晩の2回交換する(循環器タイプも)
・食器や水入れは都度綺麗に洗う
・使用したオモチャもこまめに洗う
ごはんやお水は犬が直接口を付ける場所です。
犬の口の中にはたくさんの菌がいるので、食事や水の中で増殖してしまえば、食中毒を起こしかねません。
また、使用しているお皿やボール、オモチャなどもきちんと手で触れてチェックをし、ぬるつきがないようにしましょう(ヌルヌルするのは菌が繁殖しているサインです)
春から夏に気をつけたい犬の病気➄「熱中症」
熱中症と聞くと「夏」というイメージがありますね。
しかし、5月6月頃には25℃を超える夏日も増えてきます。
実際にアニコム損保が行った調査を見てみると「熱中症の治療請求件数」は5月6月ごろから右肩上がりに伸びているのがわかります。
▼熱中症月別請求数【2012年】
特に春はまだ体が暑さに慣れていないため、より熱中症にかかるリスクが高い季節といえます。
早め早めに熱中症対策を取っておくことが、大切ですね。
▼「熱中症」予防のために飼い主さんができること
・車内や屋外に犬を放置しない
・窓を開けておくのは熱中症対策にならない
・気温だけでなく湿度にも注意する
・日差しが強い時間の外出はさける
クーラーをつけるか悩むときに、窓を開けて暑さ対策をとる場合がありますが、気温が高いと室内温度はほとんど下がりません。
熱中症対策になっていない場合があるので、注意しましょう。
また、湿度が高いと汗が蒸散しにくく、体から熱を放出しづらくなります。
犬は口呼吸で体温調整を行うので、湿度が高いとうまく熱を放出することができません。
熱中症というと「気温」に目が行きがちですが「湿度」にも注意を払うようにしましょう。
これからの季節に注意したい病気を5つご紹介しました。
特に最後に紹介した熱中症は死亡率も高い病気です。
かかりやすい病気を覚えて、しっかり対策をしておきましょうね。
<参考URL>
家庭どうぶつ白書2018
>https://www.anicom-page.com/hakusho/book/pdf/book_201812_3_3.pdf
<画像元>
Unsplash
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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