普段私たちが接している多くの犬は、ペットとして暮らしており、人のために働く「使役犬」を実際に見る機会はそこまで多くはないと思います。
しかし、「使役犬」と言われる犬の多くは、優れた能力によって、人命救助や生活補助、様々な場面での介護や介助の手伝いを担ってくれています。
そこで今回は、そんな人のために働く「使役犬」の職業10種や仕事内容、向いている犬種についてご紹介します。
<目次>
そもそも「使役犬」とはどんな犬を指すのか?
世間一般に言われている「使役犬」とは、狩猟以外の各種作業に従事する犬のことを言います。
しかし、それはあくまでもAKC(アメリカン・ケネル・クラブ)やJKC(ジャパン・ケネル・クラブ)といった団体が決めた犬種グループ別で定められた枠組みの話です。
実際には犬の持つその優れた能力は、元々は食料を得るための狩猟の補助が始まりと言われているため、この記事では狩猟犬も「使役犬」の職業の一つとしてご紹介したいと思います。
基本的に「使役犬」の主な役割というのは、多くの人がご存知のように、人助けを目的としています。
そのため、人の役に立つことで、かつ犬が活躍できる環境、状況であれば、現在知られている職業以外にも、多岐に渡った「使役犬」での活躍が実現できる可能性があります。
「使役犬」に代表される犬種は、人によっては犬の尊厳を重んじるが故に「かわいそう…」と感じる人も少なくないかもしれませんが、「使役犬」の中には、その存在自体が人の手助けとなれる職業もあります。
続いてはそうした「使役犬」について見ていきましょう。
「使役犬」の主な職業10種とその仕事内容!
それでは、働く犬の職業には、主にどんな職種があるのか以下で確認してみましょう。
「使役犬」として私たち人のために仕事をしている犬は、その道のエキスパートなので、間違って触ってしまってもそう簡単には動じません。
しかし、職務中は基本的に触ったり、ちょっかいをかけたりするのはNGなので、もし見かけても、優しく見守って、応援してあげてくださいね。
「使役犬」職業①:盲導犬
最も私たちの身近な存在の「使役犬」と言えば、盲導犬ではないでしょうか?
盲導犬は、その昔軍用犬訓練をしていたスターリン博士という人が、犬が視覚障害者の手助けになるのでは?と考え、盲導犬訓練の方法を導き出したところから本格始動しました。
盲導犬の主な仕事内容は、視覚に障害を持つ人の歩行補助や日常生活での手助け、目的地までの誘導などです。
「使役犬」職業②:聴導犬
1975(昭和50)年にアメリカで「使役犬」として誕生したと言われる聴導犬は、盲導犬同様、聴覚に障害を持つ人の手助けになるよう訓練されました。
聴導犬の主な仕事内容は、聴覚障害を持つ飼い主さんに対して、玄関のベルや電話の着信音、目覚まし時計や赤ちゃんの泣き声など、あらゆる音を知らせる役割を担います。
また、重要な音の場合には、飼い主さんの体に触るなどの動作で音を知らせ、必要とあれば音源の元まで連れて行きます。
「使役犬」職業③:介助犬
身体に障害がある人の手足となって、様々な動作の手助けをする介助犬は、日本においては、1992(平成4)年とまだまだ最近の「使役犬」です。
介助犬は盲導犬に比べると認知度が低く、希望者の数に育成が追い付いていないと言われるほど、どちらかというとマイナーな「使役犬」職業です。
介助犬の主な仕事内容は、例えば車いすユーザーの飼い主さんが落としてしまった物を拾ったり、ドアの開け閉めを手伝ったり、電気のスイッチを押したりという日常生活の動作の手伝いがメインとなります。
「使役犬」職業④:介在活動犬/介在療法犬(ドッグセラピー)
あまり聞き慣れないこちらの介在活動/介在療法犬は、ドッグセラピーの一種で、傷ついた人の心身を癒すために働く「使役犬」の事です。
通常のペットとして私たち飼い主のそばにいてくれる愛犬も心を癒してはくれますが、介在活動犬/介在療法犬は、さらに高度な訓練を受けた“QOLに精通した専門家”として活躍しています。
主な仕事内容は、『介在活動犬』では具体的な治療目標を立てず、子供や高齢者、病気や障害を持つ人に対して、QOL(生活の質向上)を目的としています。
一方、【介在療法犬】では障害や疾患のある人の心身機能回復、医療やリハビリ、あるいは福祉専門家がその専門的業務の中で治療することがメインとなっています。
「使役犬」職業⑤:狩猟犬
3000年前の古代エジプトの壁画には、立ち耳の犬が狩猟を手伝っている姿が描かれるほど「使役犬」として活躍していた狩猟犬。
時代が進むにつれて、狩猟犬は主に4つ足の獣を狩る『獣猟犬』と鳥をターゲットにした【鳥猟犬】の2つのジャンルに分かれていきました。
主な仕事内容は、『獣猟犬』では鋭い嗅覚と吠え声を使った追跡伝達で、【鳥猟犬】では獲物の探索と位置を示すポインター、獲物を追い立てたり、運んだりする追跡捕獲・運搬です。
「使役犬」職業⑥:牧羊犬
紀元前2500年頃、本格的にヨーロッパやアメリカを中心に改良が進み、「使役犬」として活躍してきた牧羊犬は牧畜犬とも呼ばれ、家畜の群れの誘導や見張りなど、人で行うにはなかなか難しい仕事をこなしてきました。
主な仕事内容は、上記でも触れたとおり、朝に羊などの家畜を牧舎から牧場へ連れ出し、夕方には戻す誘導の役目や牧場内の見張り役などをメインとして仕事をします。
「使役犬」職業⑦:警察犬
警察犬は、1912(大正元)年、イギリスから2頭を迎え入れ、警察の様々な捜査活動に協力する「使役犬」として現在も活躍しています。
警察犬には、直轄警察犬と、嘱託警察犬の2パターンがあり、嘱託警察犬は、一般の飼い主さんが飼養している犬を、各都道府県で毎年行われる審査会で合格させるとなることが出来ます。
主な仕事内容は、人の残したニオイの追跡や遺留物のニオイを元に割り出しが必要な容疑者の選別、迷子や行方不明者を探す捜索などが主な仕事となっています。
「使役犬」職業⑧:災害救助犬(警備犬)
警察に協力する犬として、警察犬以外に警備部に所属する災害救助犬(警備犬)と言われる「使役犬」が居ます。
災害救助犬は、任務別に首輪が色分けされる警備犬のうちの一つで、災害救助犬のほかには、国際救急援助隊として世界で活躍する犬もいます。
災害救助犬の主な仕事内容は、土砂崩れや地震、台風など天災によって起こった生存者、行方不明者の捜索です。
警察犬が特定の人物の臭気を追うよう訓練されているのに対し、災害救助犬は空気中に浮遊する不特定多数の臭気に反応するよう訓練されています。
「使役犬」職業⑨:麻薬探知犬
名前の通り、麻薬の探知を専門とする「使役犬」の麻薬探知犬は、1979(昭和54)年にアメリカから訓練を受けたラブラドール・レトリバーでした。
その後1981(昭和56)年に国内で訓練を受けたシェリーというジャーマンシェパードが麻薬探知犬第一号と言われています。
現在は、仲間意識が強く嗅覚もとても優れているビーグルが、麻薬探知犬として活躍している場合も多いですね。
麻薬探知犬の主な仕事内容は、貨物の中の麻薬のニオイを嗅ぎ分け荷物を引っ搔いてハンドラーに知らせたり、旅行者が身に付けている麻薬を探知し、その人物の横にオスワリして知らせたりする仕事がメインとなっています。
「使役犬」職業⑩:がん探知犬
アメリカで1990年代から研究が始まっていたがん探知犬は、人の呼気のニオイから、がん患者かどうかを判別する「使役犬」です。
がん探知犬の主な仕事内容は、日本ではトレーニングを受けた犬が、人の尿に含まれるがん患者特有のニオイ物質を察知することで判定します。
最近ではイギリスやフランスでも研究結果が報告されており、呼気であれ、尿であれ、その的中率は驚異の90%越えという報告もあるほど。
犬の嗅覚の凄さが窺える職業の一つですね。
「使役犬」に向いている犬種って?
では、これだけすごい能力を持ち合わせた犬の中で、「使役犬」に向く犬種とはどんな犬種なのでしょうか?
<使役犬に向いている主な犬種>
・エアデール・テリア
・ボクサー
・コリー
・ドーベルマン
・ゴールデン・レトリバー
・ラブラドール・レトリバー
・ジャーマン・シェパード・ドッグ
・ビーグル
上記が主に「使役犬」に向いていると言われる犬種です。
基本的に、人や他犬が大好きで、それでいて学ぶことを得意とする犬種が「使役犬」として向いています。
しかし、だからと言って他の犬種がこうした「使役犬」には向かないかという訳ではなく、人と何か学ぶこと、どんな犬に対しても優しく接することが出来るワンちゃんや、遊びも学びも一生懸命取り組むワンちゃんであれば、可能性は十分にあります。
特に介在活動犬や介在療法犬、嘱託警察犬については、小型犬も活躍できるため、トレーニング次第では大型犬以上の活躍を見せてくれるかもしれません。
まとめ
いかがでしたか?
「使役犬」と一言に言っても、様々な職種があり、また、その職に懸命に取り組む犬たちは、その道のプロフェッショナルです。
人によっては「使役犬」という呼び方は、「奴隷みたいで可哀そう」と思う人もいる事でしょう。
しかし、だからこそ、その犬を尊重し、人のために働いてくれているという気持ちをしっかりと持ち続けることは、「使役犬」を育てる際に決して忘れてはいけない重要事項ですね。
<参考書籍>
気持ちを知ればもっと好きになる! 犬の教科書
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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