犬の健康診断は基本的には人同様、血液検査や便検査、尿検査など、いくつかの項目に分けた検査を行います。
年齢による違いや重視したい項目、また検査回数や費用の目安など、受けさせるとなれば気になるところではないでしょうか?
今回は、そんな犬の春の健康診断前に知っておきたい!
年齢別で重視する検診項目や検査回数、費用の目安についてご紹介します。
<目次>
犬にも健康診断が重要な理由

犬に対する健康診断と聞くと、真っ先に思い浮かぶのは血液検査だったり、便検査だったりすると思います。
それこそ年に一回の狂犬病予防接種やフィラリア予防ワクチン接種では、必ずと言って良いほど血液検査をするため、その血液検査で何か問題が見つからなければ、若い内なんかは特にそれで満足してしまって、「健康診断の必要性までは…」と考える飼い主さんは少なくないかもしれません。
しかし犬は元々痛みにとても我慢強い動物で、体調の異変を本能的に隠す行動をする傾向があります。
そのため、飼い主さんがその異変に気付かず愛犬の体調を見過ごしてしまうと、気付いた時には既に進行してしまっている可能性があるのです。
人であってもそうですが、犬の場合であっても、【若いから健康】ということはありません。
迎える犬種によっては、遺伝的な関係で生まれた時から数カ月、または数年間の内に膝蓋骨脱臼になりやすい犬種(チワワやヨークシャー・テリアなど)や僧帽弁閉鎖不全症になりやすい犬種(キャバリアキング・チャールズスパニエルやポメラニアンなど)がいるため、「若くて元気だから健康診断は必要ない」というような自己判断はしないよう注意しましょう。
検査項目は年齢別で重視した方が良いの?

一般的に愛犬に健康診断を受けさせる際は、基本的な検査は欠かせません。
通常なら、血液検査や便検査、尿検査、体重、触診などが中心になると思います。では、それに加えて年齢別で検査項目を重視する必要性はあるのでしょうか?
答えは、『YES』です。
▽『年齢別春の健康診断異常の有無結果(2023年4月~6月:全203頭)』
上記は、神奈川県にある動物医療センターにて行われたペットの春の健康診断結果を表したデータですが、健康診断を受けた犬全体から見た異常の有無結果では、7歳(139頭)までは42%に異常が見られ、7歳~10歳(29頭)では66%、10歳以上(35頭)に至っては、83%もの割合で愛犬の異常が見られた結果となりました。
当然の結果と言えばそうかもしれませんが、やはり年齢を重ねれば重ねるほど『異常あり』の割合が多くなっていっているのが分かりますね。
そして検査項目の結果では、次のような年齢別での結果の違いも見受けられました。
▽『年齢別検査項目の異常結果』
若齢犬では、ASTやALT、ALPといった肝臓機能の数値を示す項目の異常が認められましたが、一方のシニア犬に差し掛かるとされる7歳~10歳までの成犬では、比較的そこまで多くの頭数異常は認められない結果に。
しかし、10歳以上を超えると再びALTやALP、γ(ガンマ)‐GPTなどの値に異常が認められ、また、合わせてLIPAといった内分泌疾患や膵臓などの内臓数値に関わる部分、中性脂肪の値を示すTGにも異常が見られる結果となりました。
犬の場合、若齢犬で見せるASTやALPの数値異常は、もちろん何かしらの病気が原因で異常な数値を認める場合もありますが、そうでない場合にも上がることがあります。
筆者の3代目柴犬は、以前毎年のフィラリア予防注射前の血液検査でALPなどの値が若干高いことが獣医さんから指摘されましたが、これといった身体的な異常をその後認めることはなく、今では正常値に戻りました。
けれど、これが高齢犬の場合では明らかな肝機能低下に繋がっていることがあるため、そのような懸念がある場合には、別途超音波(エコー)検査やCT、MRIなどのオプションを付けることで詳しい病状を検査するのがオススメです。
年齢別で見る健康診断検査項目の詳しい内容

それでは、具体的に健康診断を愛犬に受けさせる時には、どのような項目内容に注目すれば良いのでしょうか?
以下で、年齢別に押さえておきたい健康診断検査項目を確認してみましょう。
若齢期(~6歳まで)

6歳までの愛犬の健康診断では、基本的には血液検査を中心に、便検査、尿検査、体重などを調べてもらうのがオススメです。
合わせて骨格疾患などが気になる場合には、レントゲン検査や歯の検査をしてもらうと、なおベストな健康診断となるでしょう。
シニア期(7歳~10歳まで)

シニア期に差し掛かる7歳以降の愛犬の健康診断では、より詳細な検査が重要となってきます。
基本的な検診に加え、この時期からは超音波(エコー)検査やレントゲン検査、また、心臓病マーカーや甲状腺(T4)検査などのオプションを追加することで、病気の早期発見・早期治療に役立てると良いでしょう。
超高齢期(10歳~)

人も超高齢化になる昨今、犬も今では平均寿命が14歳と超高齢化となったことで、気を付けておきたいのが認知症やがんの兆候です。
定期的な血液検査などの基本健診に加えて、超音波(エコー)検査やレントゲン検査、甲状腺(T4)検査、PLI(膵特異的リパーゼ)検査、胸部検査などを組み合わせて、検査すると良いでしょう。
また、日常生活の行動の変化や食欲の変化などにも気を配ることによって、より精密な検査が出来るような心掛けをしておくことも大切です。
健康診断を受ける際の目安回数はある?

人の健康診断では、会社員の場合であっても、個人事業主の場合であっても年に一回受けることを推奨されます。
しかし犬の健康診断の場合、飼い主さんご自身がそれを申し込まない以上、具体的な検査などは行ってはくれないため、ご自身が忘れないようなタイミングや季節の変わり目などに健康診断の検討をすると良いでしょう。
それらを踏まえた上で、愛犬の定期検診の推奨目安回数は、年齢別で回数が異なります。
▼【犬の年齢別で見る定期健診目安回数】
・若齢期:年に1回
・シニア期:年に2回
・高齢期:年2回~3回(必要に応じて)
やはりシニア期に差し掛かる年齢に入ると、病気へのリスクが高まるため、定期的な検診が推奨されます。
▽『獣医師100人に聞いた健康診断目安回数』
上記のデータは、獣医師による評価サービスなどを運営するVet’sEyeが提供しているデータです。
このデータでは、79%以上もの獣医師が「最低でも年に一度は健康診断を受けた方が良い」との回答を示しており、それだけでも病気の早期発見・早期治療に役立つとして、推奨しています。
また、その中には具体的な意見を示している獣医さんもいるようで、1歳~6歳までの愛犬では年に1回、7歳~10歳では年に2回、11歳以降では、年に3回~4回と、上記で紹介したように、年齢に応じて臨機応変な回数変更を推奨している意見もありました。
流石に3回~4回は、愛犬に対する心身への負担も気になるところなので、かかりつけの獣医さんとご相談の上、慎重な判断が良いかとは思います。
ただ、少なくとも犬の健康診断は春と秋の2回実施されることが多いため、7歳を目途にこのタイミングで検討すると良いでしょう。
健康診断の目安料金っていくら?

犬の健康診断費用は、基本的には病院や検査内容などによってマチマチです。
具体的な費用については健康診断を受ける病院で、詳しい検査費用を調べる必要があります。
目安として申し上げれば、犬の健康診断の目安料金は、大体5,000円~30,000円程度の幅があります。
ただ、一般的に動物病院の診療費用は人のように健康保険制度などが適用されているわけではないため、動物病院が各自で設定した診療費用(自由診療)で決められています。
とはいえ、ある程度の目安料金の中央値などは決まっている部分もあるため、一般的な検査の内訳では、以下のような価格帯が多く設定されている傾向にあるようです。
血液検査:3,000円~5,000円
便・尿検査:1,000円~3,000円
腹部・心エコー:3,000円~5,000円
そのため、一概にピンキリな価格設定をしているわけではありません。
しかし、現時点の獣医療における診療費用設定は、基本的に『自由診療』設定とされているため、健康診断を愛犬に受けさせる際には、事前に予約をした上で、目安費用なども獣医師さんに相談しておくと良いでしょう。
まとめ

今回は、犬の春の健康診断で年齢別で必要になる項目や目安回数、目安料金などをご紹介しました。
健康診断というと、人でも犬でも、結構大掛かりな検査というイメージがついてしまいますが、犬の年齢は人の約4~7倍速く経過すると言われているため、少なくとも6歳を過ぎた辺りには、愛犬にも是非とも健康診断の検討を意識してあげてくださいね。
<参考サイト>
横浜みどり動物医療センター しょう動物病院
>https://sho-ac.jp/department/prevention/2023
犬の健康診断はメリットがいっぱい!受ける頻度や注意点は?|Vet’sEye
>https://vetseye.info/opinions/op022/
家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査及び 飼育者意識調査結果の概要
>https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10968068_po_a2.pdf?contentNo=1&alternativeNo=

また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。

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