日向ぼっこで得られる効果には、様々なものがあります。
それは人であれ犬であれ、ほとんど違いという違いはなく、特に活動量が低下しやすいシニア犬にとっては、出来る限り意識的な日向ぼっこはさせてあげたいものです。
そこで今回は、シニア犬にこそオススメな日向ぼっこの理由、主な効果や注意点、時間帯などについてご紹介します。
<目次>
実は医療現場でも使われていた日向ぼっこの起源『ヘリオセラピー』とは?
ヘリオセラピーとは、その昔、古代エジプトのヘリオポリスというところで発展した太陽療法のことと言われています。
このヘリオセラピーは、カラーセラピーの起源と言われる一方で、『太陽“療法”』という名の通り、医療の一つとしても用いられていました。
ヘリオセラピーは、スイスの医師であったオーギュスト・ロリエ博士(1874年~1954年)が患者に用いた治療法でもあり、健全な食事と太陽の力を組み合わせることで、結果的に結核、創傷、くる病、天然痘など、計165種類以上もの病気をヘリオセラピー(太陽療法)によって改善したとされています。
彼が見出したこのような結果は現在でも十分立証効果のあるもので、2021年には、東南ヨーロッパに位置するバルカン半島のモンテネグロで、夏季休暇を過ごした軽度~重度のアトピー性皮膚炎患者24例(平均年齢24.25歳、男性54.2%、平均罹病期間13.71年)に対する観察研究が行われました。
観察研究では、紫外線が最も強い時間帯を避け、日焼け止めを用いずに1日3~4時間の日光浴を、2週間続けたと言います。
その結果、2週間の太陽療法の終了直後および終了後3か月時点での状況は、治療開始前と治療終了後で、有意な皮疹と痒みの軽減およびQOLの改善が認められたという結果が報告されたのでした。
シニア犬にこそ日向ぼっこがオススメな理由とは?
犬は自然と日向ぼっこを好む子が多いものですが、その日向ぼっこがシニア犬にこそオススメな理由とは何でしょうか?
シニア犬の多くは年齢を重ねれば重ねるほど、活動量の低下、免疫力の低下、気力の低下などが顕著に表れてきます。
それこそ、少し前までは問題なく出来ていたことが、次に気付いた時には随分と時間が掛かってしまうようになっていたり、出来なくなってしまっていたり…。
一日をおおよそ人の3倍の速さで過ごしていると言われる犬の場合、その身体的・精神的な変化は、私たち飼い主が思っている以上に早いもののため、致し方ない面もあるでしょう。
しかし、そんなシニア犬の変化に良い効果をもたらしてくれる方法の一つこそ、日向ぼっこなのです。
シニア犬にとっての日向ぼっこは上記でご紹介したヘリオセラピーのように、決められた適切な時間帯や適切な方法で行えば、ビタミンD生成の手助けになる効果や皮膚・被毛の健康効果、セロトニン分泌による心身健康効果など、様々な良い効果を得ることが可能です。
当然、こういった効果を得る時には、注意点などもいくつか存在します。
けれど、総じてシニア犬が日向ぼっこをすること自体は成犬以上に必要なこととなってくるため、意識的な対応を心掛けてあげましょう。
シニア犬が日向ぼっこで得られる効果
シニア犬が日向ぼっこをすることで得られる良い効果には、前述でもお伝えした通り、様々なものがあります。
以下でその詳しい効果内容を一つずつ確認していきましょう。
▼【日向ぼっこで得られる主な効果】
・ビタミンD生成の手助け
・殺菌作用による皮膚・被毛の健康維持
・セロトニン効果による心身の健康
ビタミンD生成の手助け
シニア犬が日向ぼっこをすることで得られる効果の一つ目は、ビタミンD生成の手助けです。
ビタミンDは、シニア犬になると気になり出してくる骨密度の低下や骨自体の健康維持などの手助けとなってくれます。
また、ビタミンDは免疫機能の正常化にも一役買ってくれるため、感染症の発症や悪化などを防ぐ働きも期待できます。
殺菌作用による皮膚・被毛の健康維持
シニア犬が日向ぼっこをすることは、皮膚・被毛の健康維持に効果的です。
日向ぼっこの元となる日光(紫外線)には、殺菌作用があるため、細菌の繁殖などを予防してくれます。
また、日射しの暖かさは血行の促進を促し、皮膚の新陳代謝も活性化させてくれるため、これによって健康な皮膚の形成、被毛の成長に効果的です。
セロトニン効果による心身の健康
セロトニンとは、別名『幸せホルモン』と言われる物質です。
その幸せホルモンは日向ぼっこをすることで得られ、精神的な安定作用をもたらします。
シニア犬になると活動量が著しく減ってしまうことで、散歩の頻度も減ってしまうことが珍しくありませんが、こうした精神に作用するホルモンは、認知症によくある生活リズムの乱れの改善や夜鳴き、徘徊などにも効果が期待できます。
日向ぼっこと日光浴は同じじゃないの?
よく日向ぼっこと日光浴は似たような意味合いで使われることがあると思いますが、実は明確な違いがあるのをご存知でしょうか?
その違いは、主に季節にあります。
一般的に『日向ぼっこ』とは、正式名称を『日向ぼこり・日向ぼこ』と言い、冬の季語として扱われています。これは、「冬の日射しを浴びて暖まること」とされており、諸説ある日向ぼっこの語源であると言われています。
一方で【日光浴】とは、夏場によく使われる言葉で、日光“浴”というだけあって、「肌を焼く」意味合いで扱われています。
陽に当たるという意味合いで言えば、どちらも基本的にはあまり違いはないため、どちらを使っても正解と言えるでしょう。
ただし、その陽に当たる時間帯や得られる効果による違いについては、所々気に掛けなければならない点がいくつかあります。
これは、ヘリオセラピストであったロリエ博士も提言している部分で、時間帯や注意点については、十分に留意するよう心掛けることが大切です。
シニア犬が日向ぼっこする際に気を付けたい季節別の時間帯
それでは、ここからはシニア犬が日向ぼっこする際に気を付けておきたい季節別での時間帯をご紹介します。
ヘリオセラピストのロリエ博士によると、日向ぼっこによる時間帯は基本的には午前中がベストだとしており、その時間帯は8時~10時頃が一番理想的だとしました。
また、全身に日光を浴びる際には、徐々に時間を増やすことで、決して肌は焼かないこと。
そして、太陽に当たる時には背中に当たることが、最も健康効果が高く、水をたくさん飲み、バランスの摂れた食事、適度な呼吸と運動が、体を最適な状態に保つことに繋がると結論付けました。
ただ、これら一連のメソッドは、あくまでも人に対して向けたものであって、犬に向けたものではありません。
犬の場合の時間帯や日光照射時間については夏と冬で、以下のような点に留意すると良いでしょう。
<春~夏の日光浴>
時間帯:早朝または夕方(17時以降~)
適切日光照射時間:15分~30分
<秋~冬の日向ぼっこ>
時間帯:午前中~正午
適切日光照射時間:30分~1時間
日向ぼっこをすることで得られる効果の照射時間は、地域や天候などによってそれぞれ変わってきますが、シニア犬にとって日向ぼっこをする時間は、一律にとても貴重な時間なのは変わりありません。
体内時計のリセットや免疫力アップの効果はもちろんですが、何よりも外からの刺激を感じられる環境に身を置くことは、健康長寿にも繋がります。
カートに乗せたり、抱き抱えたりして散歩に出てあげることで、十分日光の効力は得られます。
シニア犬の場合には、どちらの季節であったとしても、必ず一日に一度は陽の光が浴びられるような状況を作ってあげましょう。
シニア犬が日向ぼっこする際の注意点
シニア犬が日向ぼっこをする際には、以下のような項目に注意しましょう。
▼【シニア犬が日向ぼっこで注意すべき事項】
・熱中症
・白内障
・皮膚ガン
・脱水症状
これらの項目は、シニア犬に限らず幼犬や成犬でも注意しておきたい事項になります。
あまりにも長い日向ぼっこや日光浴は、夏場だけではなく冬場にも熱中症や脱水症状を引き起こす原因になります。
定期的に様子を見ながら、異変が何もないか確認するようにしましょう。
また、白内障や皮膚ガンは、紫外線の浴びすぎによることで発症するリスクを高めてしまうため、要注意です。
さらに、室内の場合、窓ガラス越しの日向ぼっこはビタミンD生成に必要な紫外線B波(UVB)は遮断されてしまうため、注意が必要です。
シニア犬に適切に、そして適度に効果的な日向ぼっこを室内でさせてあげる際には、必ず網戸越しでの日向ぼっこを意識するよう心掛けてあげてください。
まとめ
犬の日向ぼっこは、人の日向ぼっこ同様、様々な効果を発揮します。
ただしその対象がシニア犬だった場合には、幼犬や成犬以上に注意して、頻繁に様子を窺がってあげることが大切です。
しかし、愛犬にとっての日向ぼっこは、適切に管理してあげられれば、良いこと尽くしでもあります。
時間のある際は是非とも愛犬と一緒に、ゆったり暖かな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
<参考サイト>
犬と日向ぼっこ:最古の健康療法「日向ぼっこ」が犬を元気にしてくれる|ドッグトレーニング・ヒーリングスクール Good Boy Heart
>https://www.goodboyheart.com/blog/dog/2651
日光療法でアトピー性皮膚炎が長期に改善 モンテネグロ・24例の観察研究|MEDICAL TRIBUNE
>https://medical-tribune.co.jp/news/articles/?blogid=7&entryid=556095
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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