子犬を迎えると、その可愛さからすぐにでも相手をしたい気持ちに駆られてしまう飼い主さんは多いと思います。
しかし一方で、子犬の体調を心配する飼い主さんも居ることでしょう。
実際に子犬はご家庭に迎え入れてから1週間~2週間は、環境に慣れずに体調を崩す子も多く居ます。
そこで今回は、子犬を迎えた直後に注意したい疾患をご紹介します。
主な症状や対策方法を知って、子犬を迎える前の予備知識としてお役立てください。
<目次>
子犬の迎え入れ直後の要注意疾患①:犬ジステンパーウイルス感染症
子犬の迎え入れ直後で気を付けておきたい疾患に、犬ジステンパーウイルス感染症というものがあります。
主な感染経路は、経気道または経口感染で感染し、潜伏期間を通常数日~2週間程度を要します。
その結果、発症してしまった場合には以下のような症状が見られるようになります。
犬ジステンパー感染症は、基本的に急性に高熱を発するウイルス性感染症の代表的な病気とされており、伝染力が強く、且つ丁度子犬を迎える2か月~3か月齢ごろの場合の発症では、死亡率も50%~90%と高い傾向にあるのが特徴の大変恐ろしい疾患の一つです。
▽『月齢別犬ジステンパーウイルス抗体陽性率』
上記のデータは、1999年~2007年までにおける抗犬ジステンパーウイルスIgM(免疫グロブリンM)抗体の陽性率について示したデータです。
古いデータではあるものの、月齢が低い場合(1歳以下)と月齢が高い場合(6歳以上)では、純血種(黒グラフ)であれ雑種(灰色グラフ)であれ、互いに免疫が弱いために例えワクチン接種をしていても、感染しやすい状況を表しています。
<犬ジステンパーウイルスによる感染を予防するための対策>
犬ジステンパーウイルス感染症を予防する最も効果的な方法は、ワクチン接種です。
一般的に子犬は生後6週~8週に1回、生後12週後に2回目を行うことで免疫を獲得でき、万が一犬ジステンパーウイルス感染症に感染しても、症状や致死率への脅威を最小限にすることが可能です。
犬ジステンパーウイルス感染症は、ワクチン接種をしっかりとした場合であっても、その免疫能の形成や持続の不十分さで感染してしまう危険性があるため、特に他のワンコと交流を多く持つ愛犬を迎えている飼い主さんの場合、十分に気に掛けてあげましょう。
子犬の迎え入れ直後の要注意疾患②:犬パルボウイルス感染症
犬パルボウイルス感染症とは、イヌパルボウイルスというウイルスに感染することによって発症する疾患です。
犬パルボウイルス感染症には、主に離乳期以降の子犬が罹る『腸炎型』と生後3週~12週目の子犬で罹る『心筋炎型』の2つのタイプがあります。ただ、この内広く発生し、発症するとわずか1日~2日で死亡してしまう大変危険なタイプは、『腸炎型』です。
犬パルボウイルス感染症は、その多くが生後2か月~3か月を経過した子犬であれば罹る可能性が増す感染症ですが、中でも初乳抗体が低下しだす生後6週~12週くらいの子犬は、特に集中して感染する危険性があります。
▽『子犬の初乳抗体の量と週齢による違い』
通常、母犬からの初乳抗体は上記のグラフのように、ピークは大体4週齢を迎えると徐々に下がっていきます。
そして、8週齢(生後2か月)~16週齢(生後4か月)頃までは、病気に対する耐性が著しく低下してしまうため、しっかりとした予防を心掛けることが肝心です。
<犬パルボウイルスによる感染を予防するための対策>
犬パルボウイルス感染症を予防する最も効果的な方法は、犬ジステンパーウイルス感染症同様、ワクチン接種が有効です。
初乳による母犬からもらった抗体が低下しだす概ね2か月以降は、子犬の発育状況をしっかりと観察しつつ、ワクチンの接種をするのがオススメです。
その後は、約1年ごとを目途に継続的に接種を行うことで、感染のリスク低下を図ると良いでしょう。
子犬の迎え入れ直後の要注意疾患③:ケンネルコフ(伝染性気管気管支炎)
通称『犬風邪』などと言われるケンネルコフ(伝染性気管気管支炎)は、ペットショップやブリーダーの犬舎内で子犬が良く発症する感染症です。
主な感染原因となるものには、呼吸器系感染症を引き起こすウイルス、細菌、マイコプラズマなど、ジステンパーウイルスを除いた単独、もしくは複合感染で発症すると言われています。
ケンネルコフは、前述でご紹介した感染症のような死亡するといった危険性は稀で、むしろ元気はあるのに空咳をするというのが良く見られる特徴として挙げられます。
しかし、そうした傾向があるからこそ油断して重度まで症状を進行させてしまうと、肺炎へ移行してしまう危険性が高まるため、注意する必要があります。
▽『正常な肺と異常な肺の違いを示したレントゲン画像』
https://www.inutome.jp/c/wp-content/uploads/2024/12/image4-8.png引用元:https://www.wizoo.co.jp/infomation/all_news/papikiton/2024/9463/
ケンネルコフは、感染した原因がウイルス感染だった場合では、犬アデノウイルスⅠ型・Ⅱ型、犬パラインフルエンザウイルス、犬ヘルペスウイルスなどが関与していることが多く、細菌感染だった場合では、気管支敗血症菌(ボルデテラ・ブロンキゼプティカ)などが関係していると言われています。
そのため、予防する際にはその原因をしっかりと見極めてから対策してあげるよう心掛けましょう。
<ケンネルコフを予防するための対策>
一般的にケンネルコフは、ご家庭に迎え入れる前の犬舎やペットショップ、また、そうでなくともペットホテルやトリミングサロンなどで感染しやすいです。
ウイルス感染で起こった場合であれば、ワクチン接種が有効な対策となります。ただし、ケンネルコフを起こすウイルスは、乾燥しやすい寒い季節に活発化しやすくなるため、日々のこまめな清掃や換気、湿度管理なども合わせて徹底することが大切です。
一方で細菌感染が原因で起こった場合には、鎮咳薬や抗菌剤などの投薬で症状の改善を図ります。
子犬の迎え入れ直後の要注意疾患④:寄生虫症(回虫・鉤虫・糞線虫・条虫・ジアルジアなど)
家族に迎えてすぐは、下痢や嘔吐など、「ストレスの影響かな?」とも思えるような症状を子犬はよく呈するものですが、その症状が長引くようであれば、寄生虫症などを疑ってみましょう。
寄生虫症は、その感染した寄生虫の種類や詳しい感染経路にもよりますが、子犬が生まれた時から感染している場合も少なくありません。
寄生虫症は、ただでさえその種類が多岐に渡るため、まずは原因をいち早く特定することが大切です。
例えば回虫や鉤虫といった寄生虫の場合には、その感染経路はもしかしたら母犬からの胎盤感染、乳汁感染が関係しているかもしれません。
一方で糞線虫や条虫、ジアルジアなどは、不潔な環境下や汚染水、ノミを介して感染し、またこうした寄生虫症は、犬だけでなく人にも感染する人畜共通感染症でもあるため、人も注意が必要です。
▽『寄生虫による感染経路図』
このような寄生虫は、早期に対処すれば予後は良好に回復することが多いものです。
しかし例えば迎えた子犬が保護犬からなど、なんらか対処が遅れてしまうような理由があった場合、子犬に重篤な症状を招いてしまう危険性があるため、出来るだけ早急に対処するよう心掛けることが大切です。
<寄生虫症を予防するための対策>
寄生虫症を予防するために一番効果的な方法は、出来る限り早急に駆虫薬などを獣医師さんから投薬してもらうことです。
中でも症状として呈しているものが、食欲不振、水溶性の下痢、血液・粘液性の下痢、肺炎、貧血だった場合、それらは重篤な場合が多く、緊急性を要すため、すぐに動物病院で診てもらいましょう。
ただし、「下痢などは起こしてないから大丈夫」と思うのも危険です。
このような寄生虫症は、必ずしも下痢を引き起こすものではない場合もあるため、子犬を迎えたら念のため、便検査などをしっかりと行っておくと良いでしょう。
まとめ
今回は、子犬を迎えた直後に注意したい疾患をご紹介しました。
昔は犬の迎え先というと、大抵がペットショップやブリーダーさんだったかと思いますが、近年は保護犬の中でも子犬をという人も多くなったと思います。
しかし、そうした場合には特に今回ご紹介した疾患に気を付けておく必要があるため、子犬のお迎えをご検討の際は事前にチェックしてみてくださいね。
<参考書籍>
もっともくわしいイヌの病気百科 イヌの病気・ケガの知識と治療
犬の医学
<参考サイト>
犬に優しい予防接種|水戸動物病院
>https://www.mito-vet.com/vaccination-dog
1999-2007年の日本における抗犬ジステンパーウイルスIgM抗体の陽性率|農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター
>https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010814646.pdf
犬と猫の内部寄生虫の話~便の中の白い糸状のもの、それ回虫かもしれません~|ALL animal hospital group
>https://www.wizoo.co.jp/infomation/disease/2023/8505/
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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