愛犬に対する愛情表現には、『満足するまで撫でる』や『遊びに誘われたら全力で応える』など、様々な示し方があるかと思います。
しかし、その中でも『愛犬の口にキスをする』という行動が人から犬に虫歯や歯周病をうつしてしまう可能性があるのをご存知でしょうか?
今回は、人から犬に虫歯や歯周病がうつる可能性があるNG行動、その予防策や犬から人にうつる感染症をまとめました。
<目次>
人から犬へ虫歯や歯周病ってうつるの?
結論から申し上げれば、人から犬へ虫歯や歯周病がうつる可能性は十分にあります。
そもそも犬の口腔環境というのは、人とは異なり弱アルカリ性(Ph値8.0)のため、虫歯菌(酸性の環境を好む)は住み着きづらく、歯周病菌(アルカリ性の環境を好む)は住み着きやすいという特徴を持ち合わせています。
そのため、元来では犬の口腔環境は人の口腔環境と状況が違うため、『虫歯にはならない』と言われることが多い動物でした。
しかし、虫歯菌や歯周病菌を持っている人から犬に対するスキンシップが原因で起こる虫歯や歯周病への危険性に限定して言えば、今までのその定説は当て嵌まらない可能性が十分に考えられます。
では、そうした行動とは、主にどのようなスキンシップが挙げられるのでしょうか?
次章では飼い主さん側だけではなく愛犬側からのスキンシップの場合も含め、予防策も合わせてご紹介します。
犬へ虫歯・歯周病がうつるNG行動①:犬の口にキスをする
多くの飼い主さんがついやってしまうこの行動は、犬に最も虫歯や歯周病がうつりやすい行動の一つです。
人の場合、愛犬のそのあまりの可愛さから衝動的に口元にキスをするなどの愛情表現を示す人も多いと思います。
しかしこの行動で、特に虫歯や歯周病になってしまっている人が愛犬の可愛さから愛犬の口にキスをしてしまうと、その菌が愛犬へ知らず知らずのままうつってしまい、虫歯や歯周病になるケースがあります。
愛犬へのキスで虫歯・歯周病をうつさないための予防策
愛犬へキスをする行動で虫歯や歯周病をうつさないためには、確実な方法を挙げるなら、それは愛犬にキスする衝動をグッと堪えて他の方法で愛情表現を示すことです。
しかし、それが簡単に出来たなら苦労はしませんよね。
そのため、こうした衝動が働いてしまう飼い主さんの場合には、出来るだけその衝動を愛犬の頬や額段(額と鼻の付け根部分)といった口以外の場所の愛情表現を意識すると良いでしょう。
ちなみに筆者もそうした愛情表現によって、愛犬に対する口への接触を出来るだけ避けており、今もそれは継続中です。
犬へ虫歯・歯周病がうつるNG行動②:食べかけの物を与える
ご自身が食べていたものを「愛犬も欲しがるから」と与えてしまうこの行動。
この行動も飼い主さんがつい無意識にやってしまいがちな行動の一つですが、これも愛犬側からすると、知らず知らずのうちに虫歯菌や歯周病菌がうつってしまっている可能性が考えられます。
特に普段から何かしら食べ物を欲しがるワンコや、飼い主さん自身はあげるつもりがなくとも食いしん坊で横から割り込んででも食べたがるワンコについては、この危険性が非常に高いため、注意することが大切です。
食べかけの物で虫歯・歯周病をうつさないための予防策
食べかけの物で愛犬に虫歯菌や歯周病菌をうつさないためには、事前に愛犬専用に欲しがるようなものを準備しておくと良いでしょう。
ただし、中にはあらかじめそうしておいても食べ終わった瞬間に、今度は飼い主さんの元へやってきて「それもちょうだい」とおねだりしてくるワンコは少なくないと思います。
そうした場合には、一貫して「ダメ」という気持ちで愛犬と接することが大切ですが、それが難しいようであれば、愛犬が手の届かないような所にその食べ物を置いて回避するよう心掛けておくことが大切です。
犬へ虫歯・歯周病がうつるNG行動③:愛犬が舐めてくるのを許す
愛犬による最大限と言っても良い愛情表現、舐めるといったこの行動。
中でも飼い主さんの口周りを重点的に舐めてくるワンコにとっては、愛情表現且つ、母犬に食べ物をねだる時の名残としても知られていますが、この行動も愛犬の虫歯や歯周病の危険性という観点から申し上げれば、うつってしまう可能性がある行動の一つとして挙げられます。
特に飼い主さんが大好きで、隙あらば口周りを良く舐めようとしてくるワンコの場合、飼い主さんからしたら嬉しいことこの上ない行動かもしれませんが、飼い主さん自身に虫歯菌や歯周病菌があった場合には、それらの菌はうつってしまう危険性があるため、注意が必要です。
愛犬が舐めてくる行動で虫歯・歯周病をうつさないための予防策
愛犬が愛情表現で飼い主さんの口元を舐める行動で虫歯や歯周病をうつさないためには、愛犬にとっても飼い主さんにとっても悲しいことかもしれませんが、口元を舐められないように顔を近付け過ぎないことを心掛けましょう。
ただし、口元以外であれば虫歯や歯周病などの菌が愛犬にうつってしまうことはほぼ考えられないため、別の場所を舐めさせるなどの対応で対処するのも良いでしょう。
また、舐めさせる代わりに時間が許す限り目一杯愛犬を撫でてあげたり、遊んであげたり、はたまた褒めてあげたりすることでも愛犬には十分愛情は伝わるはずです。
犬へのキスなどが原因で起こる人への感染症とは?
犬におけるスキンシップでは、以前から口への接触は様々な感染症などがうつってしまう危険性があるため、控えるようにすることが定石でした。
今でもその考えが世間一般で大きく変わることはありませんが、多くは「犬へのキスといった愛情表現は、犬の口内に生息する常在菌が原因で感染症の危険性がある」といったもので、具体的にはどのような危険がある病気に罹ってしまうのかは、あまり知られていないのではないでしょうか?
そこでこの章では、犬へのキスや犬から口元を舐められる行動が原因で起こる人への感染症をいくつかご紹介します。
犬へのキスで起こる人への感染症①:カンジダ症
人でも良く罹ることで有名なカンジダ症は、主にカンジダ属菌と言われる真菌(カビ)の一種によって発症してしまう感染症のことを言います。
人はもちろんのこと犬や猫の口腔内や鼻、肛門などにも存在することが知られており、健康な動物や人の表皮、口腔、肛門周辺の粘膜に常在する常在菌の一種です。
そのため、通常健康であれば何ら問題はありません。
しかし、日々のストレスや疲労などで免疫が低下している時に愛犬の口へキスなどのスキンシップを図った場合には、感染する可能性があります。
カンジダ症は、発症してしまうと人の場合には肛門や生殖器の粘膜の発赤、または潰瘍となったり、化膿してしまったりする場合があるため、免疫力が落ちている際は特に注意しましょう。
犬へのキスで起こる人への感染症②:カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症
日本ではあまり聞き馴染みのない感染症のカプノサイトファーガ・カニモルサス。
この感染症は、主に犬や猫が口腔内に持つ常在菌が原因で起こる感染症で、こちらもカンジダ症同様、通常人が健康であれば何ら問題はありません。
しかし、例えばこれが糖尿病に罹っている人や高齢者、免疫力が低下している飼い主さんだった場合には、愛犬との過度なスキンシップは感染する可能性が高くなります。
カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症は、発症してしまうと人の場合、発熱や倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛などを引き起こしてしまいます。
また、重症例では敗血症や髄膜炎などが起こる可能性もあり、最悪の場合には死に至る危険性があるため、注意しましょう。
犬へのキスで起こる人への感染症③:パスツレラ症
パスツレラ症とは、主にパスツレラ・マルトシダという菌によって発症してしまう感染症です。
一般的に犬や猫の口腔内、爪などに高率で保菌されていると言われており、犬では口腔内に12%~55%を保菌しているとされています。
パスツレラ症は、基本的な感染経路として、①咬傷・掻傷による感染、②非外傷性感染、③接触歴がない感染の3つがあると言われておりますが、その中でも②の非外傷性感染は、愛犬との過度なスキンシップが原因で発症してしまう場合があります。
そして、発症してしまった際には人の場合、上部気道炎、気管支炎、肺炎などの症状を引き起こしてしまう可能性があります。
日本では一般的に、このような呼吸器疾患を起こす事例が多いとも言われているため、持病などがある場合は特に注意しましょう。
まとめ
愛犬への愛情表現の一環として、愛犬へキスをする飼い主さんは多いかもしれません。
ですが、犬であっても虫歯や歯周病が人からうつってしまう可能性がある以上、そのリスクを回避するためには、口元へのキスを控えることが一番です。
そのため、愛犬との関係性は適度な接触、適度な距離感を大切に、この先もずっと健康的な毎日を送れるよう心掛けてあげてくださいね。
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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