皆さんは、犬の吠えをコントロールするトレーニングで『バークコントロール』という方法があるのをご存知ですか?
『バークコントロール』とは、その名の通り犬の吠えをコントロールするトレーニング手法のことを意味しています。この『バークコントロール』という手法を習得できれば、人で言うところの所謂『無駄吠え』や【吠え癖】と言われる行動をコントロールできる可能性があります。
今回は、そんな『バークコントロール』手法について、その方法や注意点を解説すると共に、吠えやすい犬種や既に吠えが酷い場合の対策方法についてもご紹介します。
<目次>
犬の吠えをコントロールする時は前提を忘れない事
『バークコントロール』の手法を知る前に、まず前提として覚えておいていただきたい事があります。
それは、“犬は必ず吠える動物”だということです。
犬は、例えどんなに【吠えにくい犬種】だと紹介されていても、吠える時には吠える生き物です。
「吠えない犬」として有名なバセンジーという犬種であってもそれは例外ではなく、感情が高ぶった時には、独特な鳴き声を発するとして知られています。
また、番犬としても有名で筆者の愛犬としても迎えている柴犬も、意外や意外、実はバセンジーの次くらいに「吠えない犬」として定評があります。
しかし、やはり性格によってその性質は随分と異なる部分が大きいのか、初代柴犬は、筆者が知る限りまともに「ワン!」と吠えたことは一度もありません。
けれど現在迎えている3代目柴犬は、外の犬や子供が苦手なのか、少しでも声が聞こえると敏感に反応し、その音が治まるまで低く唸ったり、低音で吠え続けたりします。
このように、同じ犬種でも性格が違えば吠えの性質も違ってきます。
犬は基本的に何の脈絡もなく吠えることはしません。必ず吠える時には、何かしらの理由が存在し、そして、何かしらの意味が込められています。
そのため、犬の吠えのコントロールトレーニングを行う際には、【吠えにくい犬】、【吠えやすい犬】の違いはあれど、大前提として“犬は必ず吠える動物”だということを忘れないように心掛けておきましょう。
『バークコントロール』の基本は「吠えろ」と「静かに」
『バークコントロール』で犬の吠えのコントロールトレーニングをする時には、基本として「吠えろ」と「静かに」を心得ておくことが重要となります。
「吠えさせないためのトレーニングなのに吠えろってどういうこと?」と、疑問を抱いた飼い主さんも居るかもしれませんが、『バークコントロール』のトレーニングは、吠えさせる状況を敢えて作って、そこから「静かに」させる方法を教えるという手順になります。
ただしこの方法は、タイミングがとても重要です。
そのため、トレーニングを行う際には、慎重に行うよう注意しましょう。
では、それらを踏まえた上でここからはその方法を、ステップ毎に詳しく見ていきましょう。
ステップ1:犬に「吠えろ」を覚えさせる
『バークコントロール』のステップ1では、犬に吠えさせる状況を敢えて作ります。方法としては次のような流れで、「吠えろ」という指示を覚えさせます。
①犬から1m程離れたところでおやつやおもちゃを見せ、自発的に吠えるまで待つ
②犬が僅かでも吠えた瞬間「吠えろ」と指示し、指示とともにおやつやおもちゃを与える
③徐々にその間隔を伸ばしていき、「吠えろ」の指示を理解するまでトレーニングを続ける
ステップ2:犬に「静かに」を覚えさせる
そしてステップ2では、「吠えろ」を覚えた犬に対して、今度は「静かに」という声符(指示)を覚えさせます。方法としては、次のような流れで、「静かに」という指示を覚えさせましょう。
①ステップ1により犬に吠えさせる
②おやつやおもちゃを見せた後すかさず「静かに」の指示を与え、犬が吠えるのを止めたら褒めておやつやおもちゃを与える
③徐々にその間隔を伸ばしていき、「静かに」の指示を理解するまでトレーニングを続ける
これらのステップは、ステップ1だけでも、ステップ2だけでもいけません。必ず、ステップ1とステップ2を並行しながら、完全に「静かに」が出来るようになるまで根気強くトレーニングすることが大切です。
また、思うように指示が通らない時には、一度おやつやおもちゃを隠して、また一から始めましょう。
そして、途中でもし上手くいかないような場合では、一旦トレーニングを中断して、息抜きをさせてあげましょう。
『バークコントロール』を教える時の注意点
『バークコントロール』は、完全に犬にトレーニングできれば、とても有用な手法となり得ますが、そうでない場合にはこの方法はエスカレートさせてしまう危険性があるため、注意しましょう。
特に、もう既に問題行動として「吠える」ことが日常化してしまっている犬の場合、この『バークコントロール』のトレーニング方法は逆効果になり得てしまうため、別の方法で対策するよう心掛けることが大切です。
基本的に、この『バークコントロール』の効果が見込める場合というのは、【吠えやすい犬】に加え、問題行動として「吠える」ことが日常化していない犬種に向いています。
そのため、そもそもあまり吠えない犬や吠えても声を掛ければ瞬時に静かになるような犬の場合には、このトレーニング方法は必要ありません。また、人や犬など、何かに対して警戒心を向けているような吠えの場合にも、この原因自体が複雑なもののため、『バークコントロール』での吠え抑制は難しいので、あまり向きません。
こうした場合の吠え対策の際には、ご自身だけで解決しようとするのではなく、専門のドッグトレーナーさんに相談するなどして、吠え改善に努めてあげることが大切です。
また、その時には何が原因で吠えが日常化してしまっているのか、しっかりと原因を突き止めた上で対策するよう、注意しましょう。
「吠えやすい犬」の特徴とは?
それでは、無駄吠えや吠え癖に繋がるような「吠えやすい犬」の特徴には、どんな犬種が居るのでしょうか?
まずは以下で「吠えやすい」特徴を持った主な犬種を確認してみましょう。
【吠えやすい犬種】
・チワワ/ポメラニアン/パピヨンなどの愛玩犬
・テリア種/ビーグル/ミニチュア・ダックスフンドなどの狩猟犬
・ドーベルマン/シェパードなどの番犬
・ボーダー・コリー/ウェルシュ・コーギー/シェットランド・シープドッグなどの牧畜犬
主にこれらの犬種が、良く吠えやすく「ワンワン」という鳴き声で意思表示をしやすい犬種です。
ところで、犬にはこの「ワンワン」という鳴き方の他に、「ワオーン」という遠吠えで鳴く犬が存在します。この違いはオオカミの遺伝子に近い、所謂原始的な犬(柴犬や秋田犬、バセンジーなど)に多いと言われており、この鳴き方をする犬ほど、「ワンワン」という鳴き方が減るそうです。
けれどそれとは逆で、オオカミから遠い遺伝子を持っている犬(上記犬種)では、遠吠えすることが少ない代わりに、「ワンワン」と良く吠えることが研究で証明されているのだそう。
犬の「吠える」、「吠えない」の程度は、前述でも述べましたが、筆者の愛犬たちのように同じ犬種でも性格や性質によって全く異なる表情を見せる場合があります。
そのため、上記の「吠えやすい犬種」は参考程度に留めるよう、心掛けると良いでしょう。
吠えが既に酷い場合の対策方法
犬の吠えが既に酷い状態で、それが日常化してしまっている場合には、何よりもまずはその原因が何なのかを突き止めることが先決です。
そして、原因が何なのかしっかりと突き止めることが出来たら、次はその解決方法が自分でも対応可能なのか、そうではなく、専門家の力を借りた方が良いのかを見極めてください。
その結果、依存心が非常に強く飼い主さんの姿が少しでも見えなくなった途端、盛大に吠え始めたり、室内の破壊行動をし出したりしてしまう分離不安症が目立つ犬であった時には、専門家にまずは相談しましょう。
一方でそういうことではなく、特定の何かの時に限って吠えてしまう場合には、以下のような方法で対策してみましょう。
インターフォンや物音で吠える時の対策
インターフォンや物音で犬が吠える時には、インターフォンや物音が鳴ったと同時にフードを与えたり、「ハウス」などの指示を出して落ち着かせましょう。
ただし、フードを与えて気を逸らす方法は、一歩間違えるとそれらの音が鳴ることでおやつが貰えるというような認識になる場合もあるため、クレートやゲージに入れる場合には入ってから、入るのが苦手な場合には、フードを持ったまま「マテ」や「座れ」を指示し、待っていられたら褒めながらご褒美をあげましょう。
最初こそ慣れるまで時間が掛かりますが、徐々に音や状況に慣れてくれば落ち着いた行動が増えていきます。
窓の外に向かって吠える時の対策
窓の外に向かって犬が吠える時には、外が見えないような環境を作ることで対策しましょう。
例えば、クレートやゲージなどが窓際近くに置いてあるようなら配置転換をしたり、犬が立ち上がっても見えない位置まで目隠しフィルムを貼ったり、はたまた、人が通る時間帯があらかた把握できるなら、その時間帯に散歩に連れ出したりといった事で、吠える環境を可能な限り減らすと落ち着いた状態が増えていきます。
おねだりで吠える時の対策
犬が何かを欲したり、クレートから出して欲しがったりして吠える時には、無視を徹底することで対策しましょう。
おねだりによる吠えは、それに反応してしまう、その要求に応えてしまう事で状況を悪化させてしまいます。そのため、このような要求による吠えを犬がする時には、一貫して無視を決め込み、何もしなくなってもしばらくは構わないことを徹底しましょう。
そうすることで、犬は吠えても自分の要求が通らないことを徐々に理解していきます。
人や犬、物に吠える時の対策
人や犬とすれ違ったり、車や自転車が通り過ぎたりした時に犬が吠える時には、フードで誘導しながらルートを変えたり、飼い主さんに注目させたりして対策しましょう。
犬は、時に特定の相手や物に対してだけ吠えたり、威嚇したりすることがあります。
そのため、このような場合には無理に同じルートを通らず、その場を回避しましょう。ただ、一方で人や犬とすれ違う時、遊びたい心理から吠えている場合には、吠えているうちは近寄らせず、落ち着いた時に挨拶できるように心掛けましょう。
そうすることで、犬は「吠えなければ遊べる!」と理解していきます。ただし、吠え続けるようならその時は遊ばせずに帰るようにしてくださいね。
まとめ
今回は、『バークコントロール』について、その方法や注意点、それ以外の対策方法などをご紹介しました。
犬の吠えは、いつどのような環境でそれが誘発されるか分かりません。また、その吠えがエスカレートするかどうかも、犬の性格によってそれぞれです。
しかしだからこそ、愛犬の吠えに向き合う際には慎重に、そして、ご自身の接し方や心構えに一貫性を持った対応を心掛けてあげてくださいね。
<参考書籍>
教養としての犬 思わず人に話したくなる犬知識130
犬のしつけきちんとブック 吠えグセ解消編
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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