【ペット信託®】とは、飼い主さんにもしものことがあった時、『遺された愛犬のためにそれまで貯めていた貯金の使い道の定めや遺言の作成・保管を事前に設定、託しておける方法』のことを言います。
今や超高齢化社会と危惧される日本。
大事な愛犬を遺して自分が先に…。ということも今後は珍しくなくなるかもしれない時代。
今回は、そんな時代だから考えたい【ペット信託®】に関する仕組みや費用、注意点などを解説します。
普通の遺言ではペットに財産は残せない
犬や猫を迎えた人だと、一度くらいは「愛犬や愛猫に財産を遺せないかな…?」と考えたことがある人は多いのではないでしょうか?
しかし多くの方がご存知の通り、犬はあくまで民法上『物』としての扱いで、残念ながら財産を遺してあげる事は不可能です。
相続財産は、基本的に人に対して遺すことが決まりであり、受け取れる主体となれるのは、「人」に限られています。
ただ、過去には、「紀州のドン・ファン」と言われた資産家の男性が生前、「自分の財産は、犬の面倒を見てくれる人に相続してもらいたい」と周りに語ったことがありました。
その男性は、あまりにも奇怪な死を遂げ、その後「紀州のドン・ファン死亡事件」という通称で知られた野崎幸助氏(享年77歳)です。
結局その希望は彼が亡くなる前に、愛犬が急死してしまったため叶うことはありませんでしたが、それでも彼のその気持ちは、この【ペット信託®】の基盤となる考え方そのものだったかも知れません。
とはいえ、どちらにせよあの当時では、どんなに大切な愛犬であっても『第三者の“人”に財産(犬も含む)を託す』ことでしか、残された愛犬の生活を守ってあげる方法は皆無だったことでしょう。
けれど、あれから約7年…。
今ではコロナ過を機に多くなった愛犬や愛猫の迎え入れや時間がきっかけで、【ペット信託®】というペットのための信託サービスが、徐々に広まりつつあります。
では、そのサービスというのは具体的にどんなものなのでしょうか?
続いては、そんな【ペット信託®】の詳しいサービス内容や費用などを見ていきましょう。
【ペット信託®】は家族信託のようなもの
冒頭でも説明しましたが、【ペット信託®】とは、簡単に言ってしまえば私たち人が大切な家族に対して利用できる、家族信託のようなものです。
家族信託とは、一般的に『自分の財産(現金・預貯金・有価証券・不動産など)を、信頼できる家族や相手に託し、特定の人のために、あらかじめ定めた信託目的に従って、管理・処分・継承する財産管理方法』のことを指します。
この方法を愛犬・愛猫で応用したのが、【ペット信託®】です。
それでは、詳しい【ペット信託®】の仕組み及び費用などを見ていきましょう。
【ペット信託®】の主な仕組み
【ペット信託®】の主な仕組みは、まずは3人の登場人物が必要となり、それぞれ委託者(飼い主さん)・受託者(家族や友人など)・受益者(新しい飼い主さんまたは施設)という仕組みで成り立ちます。
また、先程冒頭で、“万が一のため”というような書き方をしましたが、この場合の“万が一”とは、死亡時だけとは限らず、病気でペットのお世話が出来なくなった場合も該当します。
主な流れとしては、まず愛犬にお金を遺してあげたいと思っている委託者(飼い主さん)と、お金の管理をしてくれる受託者(家族や友人など)の間で信託契約書を作成し、公正役場で公正証書にします。
その後、信託契約専用口座を銀行で開設したら、契約書に記載した“万が一”の場合の飼育費用などを入金しておきます。
そして必要な場合に限り、信託の見守りなどの監督をしてくれる信託監督人を設定し、基本的な手続きはこれで完了となります。
信託監督人は、設定にかかる費用は発生するものの、適宜状況の監督を行ってくれるので、大切な愛犬が最期までしっかりとお世話されるか心配な人は、信託監督人の選任も検討すると良いでしょう。
【ペット信託®】にかかる費用は?
それでは、気になる【ペット信託®】に掛かる費用をご紹介します。
【ペット信託®】に掛かる費用というのは、飼育先が信頼できる家族や友人であれば託す金額なども幅があるため、一概に決まりという決まりはありません。
しかし、老犬ホームや保護施設などの施設を飼育先として指定する場合には、その施設の規定で決められた金額を払う必要があります。
▽『【ペット信託®】にかかる犬・猫の平均合計額』
上記は、仮に契約書作成や公正証書遺言作成を専門の行政書士に依頼した場合の平均的な年間費用を表した図です。
確実に相続財産を愛犬に残そうと思った場合、初年度だけでも犬の場合で、52万円以上の費用が掛かることがお分かりいただけると思います。
ただ、通常犬にかかる生涯費用は、平均して超小型犬でおおよそ250万円前後、小型犬で210万円前後、中・大型犬で230万円前後と言われています。(愛犬の健康状況により変動します。)
そのため、例え契約書作成や公正証書遺言をご自身で最初から最後まで準備できたとしても、最低限10万円~15万円(人の公正証書遺言を実費で作成する場合)は必要になることは必須です。
また、超小型犬と大型犬では、平均寿命に差が生まれることで生涯に掛かる費用があまり変わらないことも覚えておくよう心掛けましょう。
さらに、こうした【ペット信託®】などのサービスを取り扱っている協会や銀行、行政書士などの事務所によっては、この限りではない場合があるため、利用する際にはしっかりと納得した上で利用するよう注意しましょう。
【ペット信託®】を利用する際の注意点とは?
【ペット信託®】は、ご自身のもしもの際に愛犬の今後の生活のサポートを保証してくれる、飼い主の立場からしたら、とても魅力的なサービスの一つです。
しかし、だからといってパンフレットやサービスを提供しているところの話に素直に乗ってしまうのは大変危険です。
私たち飼い主は、時として愛犬・愛猫を想うあまり、多少金額が高くても「この子が元気で生活できるなら…」と思ってしまうと、例えそれが他者から見て法外な値段の請求であったとしても、惜しみなく出してしまいたいという心理が働くことは珍しくありません。
また、【ペット信託®】を利用する場合、委託者(飼い主さん)のやることは、人でおこなう契約書作成や公正証書遺言と同じようなものなので、事細かな決め事や設定は、委託者が自由に設定することが可能です。
しかしそれは、逆を言えばお金の管理をお願いする受託者(信頼する家族や友人など)は、その負担や義務の大きさからすぐに見つかるとは限らないことも覚悟しなければなりません。
また、何よりも【ペット信託®】を利用する際のまとまった費用についても注意が必要です。
と言うのも、【ペット信託®】を利用する時には、契約時にまとまった費用を一括払いする必要が生じます。
利用する【ペット信託®】サービスによっては、100万円以上の単位で費用がかかるケースも珍しくない可能性があるため、注意しましょう。
愛犬を思うが故の【ペット信託®】も、一括でまとまったお金の入金が難しい場合、愛犬に相続財産を遺せる他の方法を検討するよう心掛けましょう。
【ペット信託®】を検討したい飼い主さんへ…
現在、日本の法律ではどうしたって動物は『物』という扱いで、ご自身の財産を残したいと考えても、愛犬に財産を残す事は出来ません。
そのため、【ペット信託®】がとても画期的なサービスに思えた人も居たかもしれません。
ただ、【ペット信託®】の活用を確実なものにしようと思うのであれば、やはりそれなりの金銭面での覚悟は必要です。
また、どんなに信用に値すると思える人を受託者または受益者に選任したからと言って、それは必ず保証されるものとは言い切れないことも覚えておいてください。
相続財産を誰か(それが例え犬でも)に遺すという行為は、多かれ少なかれトラブルに発展し得る可能性がある行為です。
残念なことですが、お金が絡むとそれまで「この人は絶対信頼できる!」と思っていた人でも、時と場合によって豹変してしまうことも少なくないのが、相続財産関連というものでしょう。
しかし、上記でお伝えした信託監督人を選任している場合であれば、受益者変更権という権利設定があったり、飼育状況を確認できたりします。
そのため、受託者または受益者に、もしも身近な人を検討される場合には、多少お金が掛かっても大切な愛犬のため、そして何よりご自身の財産を愛犬のために正しく使われていくためにも、適切な受け入れ先、もしくは信託監督人の選任を検討しましょう。
まとめ
いかがでしたか?
【ペット信託®】というと、どうしてもまだまだイメージの湧きづらいサービスです。
けれど、家族の一員、我が子のように可愛がる犬や猫と、今後もしもご自身が傍にいてあげられないような状況に直面した時には、頭の片隅でも構いません。
どうか、【ペット信託®】というサービスが現在は少しずつ普及していることを思い出してみてくださいね。
<参考書籍>
気持ちを知ればもっと好きになる! 犬の教科書
<参考サイト>
自分が死んだらペットはどうなる?ペット信託®の料金とメリット・注意点
>https://vs-group.jp/sozokuzei/supportcenter/souzoku_guide/pettrust-priceandmerit/
家族信託とは?
>https://houmukyoku.moj.go.jp/kobe/content/001354479.pdf
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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