「心臓病」と聞くと身近に感じる病気ではないので、あまりピンとこないかもしれません。
「心臓病」の怖いところは初期症状がほとんどなく、飼い主さんが気づかないうちに病気が進行してしまうところです。
加齢とともに発症する可能性が高い病気なので、この機会にぜひ「心臓病のサイン」や「年齢ごとの注意点」を覚えて愛犬の健康管理に役立ててくださいね。
愛犬が5歳を超えたら心臓の病気に注意!
アニコム損害保㈱が健保に加入した犬 約20万頭を対象に「年齢別心疾患発症率」を調査したところ、結果は下記のようになりました。
▼犬の年齢別心疾患発症率
グラフを見てみると加齢とともに発症率が高くなっていくことがわかります。
特に5歳を超えたあたりから増加傾向にあり、10歳を超えると「12.68%」まで発症率が増えています。
心臓病は一度発症すると治る病気ではありませんが、早期に発見し適切なケアをすることで進行を遅らせたり寿命を延ばすことができます。
愛犬の年齢が5歳を超えたら「心臓病のサイン」が現れていないかチェックするようにしましょう。
「早期発見のために」覚えておきたい心臓病のサイン
では、心臓病にかかるとどんな症状が現れるのでしょうか。
下の画像は心臓病の重症度をステージごとに分類した図です。
▼心臓病の重症度分類
「ステージA」から「ステージB2」は心臓の機能に異常はありますが、症状としてはほとんど現れません。
「ステージC」まで症状が進行すると心臓の拡大が見られます。
心臓が拡大すると気管の圧迫や循環血液量が低下するので酸欠状態となり「運動するとせき込む」「呼吸が早くなる」「舌が青い」「疲れやすい」といった症状が現れるようになります。
飼い主さんが「なにかおかしい」と気づくのもこの「ステージC」からです。
「ステージD」まで進行すると重度の心不全になり、血液を肺に送る力が衰えるので肺に水がたまる「肺水腫」という危険な症状が現れます。
心臓病の初期はほとんど症状が出ませんが、動物病院で診察を受けると「心雑音」や「心臓の拡大」などで異変に気づくことができます。
元気に見えても定期的に動物病院で健康診断を受けるのが大切です。
年齢ごとに注意するポイントは?
では心臓病を予防、早期発見するために年齢ごとに飼い主さんが注意すべきことはなんでしょうか。
ライフステージを4つに区切ってご紹介します。
ライフステージ①「0歳で注意すること」
先ほど心臓病は年齢が上がるとともに増加傾向にあるとお話しましたが、心臓病にかかりやすい犬種がいることから遺伝の要因も大きいのではないかと考えられています。
そのため、心臓病にかかりやすい犬種は年齢が若いうちから心臓病の症状が出始める可能性があります。
飼い始めのワクチン接種のタイミングで心臓の検査も行うようにしましょう。
ライフステージ➁「1~4歳で注意すること」
適度な運動と食事管理で肥満にならないように注意しましょう。
「肥満=心臓病になる」というわけではありませんが、体が大きくなる分心臓に負担はかかります。
体重が増えてさらに運動を嫌がるようになると、また太っていくという悪循環に陥ってしまうので、そもそも太らせないということを意識しましょう。
ライフステージ③「5~11歳で注意すること」
心臓病の発症率が高くなる年齢なので、定期的に動物病院で検診を受けて、病気の早期発見に努めましょう。
少し多く感じるかもしれませんが、半年に1回を目安に検診に行くとよいでしょう。
犬にとっての1年は人の3~4年分にあたるといわれており、1年に1度の検診だと4年検査を受けていないのと同じです。
特に7歳からはシニアの仲間入りをするので、元気だったとしてもこまめに検診に行くとよいでしょう。
ライフステージ④「12歳以降で注意すること」
何かしらトラブルを抱えていることが多い年齢です。
病気を抱えていても食事管理や投薬などでコントロールをして日常生活を送ることができます。
下の図は「犬の心臓病の重症度と死亡までの期間」を現した図です。
図を見ると軽度であればあるほど寿命が延びていることがわかります。
もし心臓病にかかったとしても早期発見をし、軽度なうちから適切なケアを行うことで寿命を延ばすことができます。
心臓病に注意すべき犬種は?
これまでの内容で「心臓病のサイン」や「加齢とともに発症率が高くなること」がお分かりいただけたと思います。
それでは、特に心臓病に気をつけた方がよい犬種はいるのでしょうか。
下記の5犬種が「心臓病の発症率が高い」といわれています。
▼心臓病の発症率が高い犬種
1位: キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
2位:ポメラニアン
3位:マルチーズ
4位:シー・ズー
5位:ヨークシャー・テリア
また、心臓病にかかりやすい犬種の発症年齢をみていくと、5歳よりも早く発症していることがわかります。
▼循環器疾患発症率の年齢別推移(好発犬種)
発症率が一番高かった「キャバリア」は3歳ごろから発症率が高くなっています。
心臓病の発症率が高い犬種を飼っている場合は、日ごろから「舌が青くなっていないか」「咳が出ていないか」といった体調の変化に注意し、こまめな検診を心がけましょう。
心臓病は見た目で気づきにくい病気なので、早期発見が何よりも重要です。
今回ご紹介した心臓病のサインや年齢別の注意点をぜひ覚えて、愛犬の健康管理に役立ててくださいね。
<参考URL>
愛犬が5歳を過ぎたらハートに注意 アニコム損害保険株式会社
>https://www.anicom-page.com/hakusho/statistics/pdf/090810.pdf
アニコム家庭どうぶつ白書2014
>https://www.anicom-page.com/hakusho/book/pdf/book_201411_3.pdf
<参考書籍>
小動物獣医看護学 小動物看護の基本と実践ガイド 上巻下巻
D.R.レイン (著)B.ク-パ- (著) 西田利穂 (著)
<画像元>
Unsplash
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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