冬の時期、人が罹りやすくなるインフルエンザや心筋梗塞なんかと同じように、犬にも冬には起こりやすい病気が存在します。
生物学的には寒さに強いとされている犬ですが、実はここ最近のワンちゃんの寒さ事情はどんどん変わってきています!
そこで今回は、犬が冬の時期に起こしやすい疾患ワースト4と疾患の種類、対処法についてご紹介します!
<目次>
今の犬は寒がりの子が増えている!?
屋外で飼養されていた頃の犬は、秋が終わり冬支度を迎える時期になると、外気温の変化を肌で感じ、自らの被毛量を増やして皮下脂肪を蓄えて冬の時期に備えていました。
とはいえ、犬の被毛にはそれぞれ上毛と下毛からなるダブルコートに覆われた毛を持つ犬種と、上毛のみのシングルコートに覆われた犬種とに分かれているため、犬種によっては寒さに弱い子も存在します。
しかし、どちらのコートを持っている犬種であっても、屋内飼育が基本となった昨今において、そういった冬支度をする必要性もないほどに、室内の温度が一定に保たれる暖房器具の上で一日を過ごすことが多くなったのは事実です。
そのため、寒さに強いとされていたダブルコートの犬種であっても、昔よりかは随分と寒さに対する抵抗力が弱くなり、現在筆者が飼養する柴犬もダブルコートですが、冬の時期は決まってホットカーペットを陣取り、その上でほぼ一日を過ごしています。
それでは、そんな寒さに弱い子が増えた今の犬たちが気を付けたい、冬の疾患ワースト4を続いてはご紹介します。
犬が気を付けたい冬疾患①:泌尿器疾患
犬が冬の時期になりやすい疾患に、泌尿器系の疾患があります。
その理由としては、私たち人でも、冬の寒い時期だとつい忘れてしまいがちな水分摂取が減るため。
特に高齢犬なんかは暖かい暖房器具の上で一日を過ごしたがる子も多いため、朝から全然水が減ってないなんてことも珍しくないでしょう。
しかし、その影響で罹りやすくなってしまう疾患の種類は、尿石症、膀胱炎、尿路感染症などがあります。
丸一日尿を出す姿を見ていなかったり、排尿時に苦しそうにしていたりしたら、早急に動物病院で診察してもらってください。
泌尿器系疾患は、動く時間が少なかったり、のどの渇きを感じなかったりすると水を飲む量が自然と減って、尿をする量も減ってしまうことで濃縮された尿が体内に長く留まり、起こりやすくなってしまいます。
泌尿器疾患にならないための対処法
一般的に、膀胱炎は尿道が短いメスに起こりやすく、尿石症は尿道が長いオスが多いと言われています。
膀胱炎については再発を繰り返すと膀胱がんになるリスクが高くなり、尿石症については尿管や尿道に石が出来、詰まってしまうと緊急性が高く、最悪死に至る可能性があります。
高齢犬を飼養している飼い主さんだけに限らず、定期的に水の量が減っているか確認したり、排泄が屋外だけなら短時間の散歩回数を増やしたりするように心掛けましょう。
犬が気を付けたい冬疾患②:呼吸器疾患
乾燥しがちな冬の時期に起こりやすい呼吸器疾患も、犬にとって気を付けたい冬疾患の一つです。
乾燥している日は特に細菌やウイルスが活動しやすく、寒さから来る免疫力の低下も重なることで、鼻やのどの粘膜が刺激を受けやすくなります。
主な症状としては、乾いた咳やクシャミ、鼻水です。
このような症状が見られた際に罹りやすくなってしまう疾患の種類は、ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)や鼻炎、肺炎などがあります。
呼吸器系疾患は、どの病気においても基本的にはウイルスや細菌といった環境因子が原因となりますが、特に子犬や高齢犬に関しては冬は免疫力が低下しやすいので、注意しましょう。
呼吸器疾患にならないための対処法
ケンネルコフについては、主に強い咳をするのが特徴的です。
ケンネルというのは『犬舎』を意味し、コフは『咳』を意味しているため、例えば、保護犬施設やペットショップ、ペットホテルなど、不特定多数の犬が居るところでは罹りやすい環境なので、事前にワクチン接種などで対処しましょう。
一方で肺炎は、免疫力が弱くなってしまう老犬に多く、気管支炎から肺炎に移行する場合も少なくなく、症状もより重くなるため、無理に運動させたり、興奮させたりしないよう配慮し、安静にさせた状態で加湿器の湿度を50~60%程に保ったり、酸素吸入を使ったりして、症状を落ち着かせ、出来るだけ早く動物病院で診察してもらってください。
犬が気を付けたい冬疾患③:関節疾患
寒くなってくると関節の節々に痛みを感じるのは、人だけではなく犬もまた同じです。
その原因としては、一つは冬で寒くなったことによる血行不良。
そしてもう一つは運動量の低下から起こる肥満の影響だと言われています。
肥満で起こる関節炎に関しては、無理な運動はかえって関節疾患の悪化に繋がってしまいますが、これら関節疾患の種類には、股関節脱臼や椎間板ヘルニア、膝蓋骨脱臼、前十字靭帯断裂などがあります。
関節疾患は、骨と骨の間のクッション材となる軟骨がすり減ったり、捻ったり、または遺伝的な事でも起こるもので、冬の季節だけに起こるものではありません。
しかし、アニコム損害株式会社様が行ったペットが冬季(12月~2月)に罹りやすい疾患調査では圧倒的に冬の時期に関節系の疾患に痛みなどが生じることが多いという結果が分かっています。
関節疾患を悪化させないための対処法
冬場に起こる関節炎の場合、多くは気温の低下や日々の暮らしによって悪化する場合があるため、室内環境の改善が大切です。
特に、椎間板ヘルニアに罹りやすいミニチュア・ダックスフントや膝蓋骨脱臼を起こしやすいトイ・プードル、ポメラニアン、チワワなどの小型犬については、先天性と後天性があるため、迎えた直後からカーペットや滑り止めのマット、ソファなどの高いところに上りたがる時には犬用のステップなどを使って対処しましょう。
また、加齢と肥満によって起こる関節炎で怖いのが前十字靭帯断裂です。
前十字靭帯断裂は後肢の動きを制限し、2~3週間以内に変性性の関節炎を起こす可能性があるため、少しの時間であっても適度な運動を心掛けましょう。
犬が気を付けたい冬疾患④:心疾患
今では犬を迎える場合、室内飼育が当たり前のように浸透しましたが、その結果室内と室外との寒暖差によって影響を及ぼす疾患に、心疾患があります。
中でも心疾患の種類で気を付けておきたいのは、犬の心臓病の8~9割を占めると言われている僧帽弁閉鎖不全症や筆者の初代柴犬も患っていた原発性不整脈などです。
心疾患は、その発症の多さからほとんどが僧帽弁閉鎖不全症のイメージが強いかもしれませんが、アメリカでの疾病統計では、僧帽弁閉鎖不全症に次いで多いのが原発性不整脈と言われており、筆者の初代柴犬は、我が家に来た8か月当初から診断を受け、注意が必要だと言われました。
そのため、心臓病=僧帽弁閉鎖不全症という観点だけではなく、その他の心疾患の可能性についても注意しましょう。
心疾患を起こさないための対処法
僧帽弁閉鎖不全症の悪化や原発性不整脈の悪化を招かないためには、基本的に室内と室外の寒暖の差をなくすことや、起き抜けの散歩では、ぬるま湯などを与えて体を暖めたり関節をある程度動かしてから出掛けるといったことを心掛けましょう。
出来るならばこういった心臓病を持ち合わせている愛犬の場合の散歩は、出来る限り日が昇った時間を意識するようにした方が良いですが、どうしても朝の早い時にしか行ける時間がない場合には、ダウンの服を着せたり、靴を履かせたりして人で言うヒートショックを起こさないような工夫を心掛けてあげてください。
まとめ
冬場は起きるだけでも大変ですが、犬が冬に罹りやすくなってしまう疾患についても注意が必要です。
筆者の初代柴犬は、結果的には『不整脈がある』と診断されただけでこれといった症状は見受けられませんでしたが、やはり高齢になるにつれ、それまで嫌がっていた洋服も着られるようになるなど、寒暖差には慎重になったのを今でも覚えています。
冬は寒さから色々なことが億劫になる季節でもありますが、大事な愛犬が冬場に病気にかからないためにも、常に気にかけてあげたいものですね。
<参考書籍>
いぬ大全304
最新版 愛犬の病気百科
もっともくわしい 犬の病気百科 犬の病気・ケガの知識と治療
犬の医学
<参考サイト>
犬と猫に発生する重症不整脈の心臓病理
>https://rd.tuat.ac.jp/activities/factors/search/20150526_3.html
~本格的な冬が到来!人と同様ペットも「冷え」が大敵~犬は骨や関節の疾患(特に関節炎)、猫は膀胱炎にご注意!
>https://www.anicom-page.com/hakusho/medical/pdf/091209.pdf
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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