「春は恋の季節」なんて言葉がありますが、犬はどうなんだろう?と考えたことはありませんか?
よく動物園の動物たちは春先になるとベビーラッシュなんて言われるほど赤ちゃんの話題が持ち上がったりしますが、犬の場合はどうなのでしょう。
そこで今回は、犬にとっての発情周期やオオカミと犬とでの違い、犬の発情に関する仕組みについてご紹介します。
<目次>
犬の祖先と言われるオオカミは季節繁殖動物!
犬の祖先はオオカミと言われておりますが、そんなオオカミは現在の犬とは違って「季節繁殖動物」です。
春は食べ物が豊富に実り始め、温暖な季節ということもあって多くの動物が出産ラッシュを迎えますが、そこには野生ならではの知恵が備わっています。
というのも、雌のオオカミは妊娠期間を逆算して排卵、交尾する時期を限定した『季節繁殖』という戦略を取っていて、一般的に「長日性季節繁殖動物」とされ、日が長くなる季節に交配し、いわゆるベビーラッシュと呼ばれる春から夏にかけて出産するのです。
そのため、必然的にベビーラッシュとなる春先は、オオカミにとっても恋の季節という印象が強いのだと思います。
オオカミを祖先に持つ犬はなぜ周期繁殖動物?
一方、現在犬の繁殖期の多くは、季節などには関係なく年間を通じて発情周期が回る「周期繁殖動物」と言われています。
…と、ここで一つ疑問が浮かんだ方も多いのではないでしょうか?
なぜ?オオカミを祖先とする犬にも関わらず、季節繁殖動物ではないのか。
その理由としては、オオカミと犬との生活環境の違いにあります。
犬は元々、オオカミと同じ「季節繁殖動物」とされていた動物でした。しかし、人と生活を共にする過程で飼育環境に変化が生まれ、「季節繁殖動物」から『周期繁殖動物』に変わっていったと考えられています。
ですので、人と生活を共にしている犬の場合、性成熟が済む1歳以降では、春という季節に関係なく「恋」の季節が訪れるということになります。
犬の主な発情周期について
犬の発情周期には、基本的に4つの時期が存在します。
また、人にある生理(月経)を、犬にも当てはめている方が多いかもしれませんが、人の生理(月経)と犬の生理(ヒート)は異なります。
では、犬にとっての発情周期とはどのようなものなのか、人の場合も少しだけ交えて一つずつ見ていきましょう。
雄犬を受け入れない発情前期
雌犬の外陰部の腫大や充血、子宮内膜の出血によって、陰部からの出血が見られる期間を発情前期と言います。
人の場合だと、この月経を起こした時点ではもうすでに排卵しており、次の月経開始日までの事を月経周期と呼んでいます。
この陰部の出血は、幅はありますが大体3~27日間続くとされており、犬の場合、この時点ではまだ雄犬の事は許容せず、排卵もまだされていません。
雄犬を受け入れる発情期
雄犬を許容し、交尾を受け入れる時期が発情期と言います。
発情期は大体5~20日間続き、発情期の3日目には排卵し、受胎可能な期間は排卵前の2日から排卵後5日の約1週間です。
よく誤解されているのが雄犬の発情に関してですが、これは雌犬の発情期に雄犬が反応することによって起こる現象です。
そのため、雄犬にとっての発情期というものは基本的には存在せず、むしろ雄犬には発情中の雌犬に対して近づけることの制限や雄犬自身のケアに徹底することが大切になります。
雄犬を受け入れなくなる発情休止期
雄を受け入れなくなり、出血もない状態を発情休止期と言います。
この間の期間はおおよそ2カ月間持続し、卵巣では黄体ホルモン(プロゲステロン)が生成され、妊娠した際には、この黄体ホルモンのおかげで妊娠をサポートしてくれます。
しかし、この時点で妊娠しなかった場合には、黄体ホルモンは小さく、白体(はくたい)となって消失します。
ただ、一方でこの期間は、黄体ホルモンの影響で偽妊娠を起こしたり、免疫力が落ち、外部の菌などで生殖器疾患になりやすい時期でもあるため、繁殖をさせる予定がないのであれば、避妊手術などを検討する必要があります。
卵胞も黄体も見られなくなる無発情期
発情休止期も終わり、卵巣内に卵胞も黄体も白体もない状態になることを無発情期と言います。
無発情期を迎えた後は、こちらも幅はありますが、大体4カ月~8カ月まで、出血は起こらなくなります。
ただ、卵胞、黄体、白体が見られないからと言って、ホルモン自体が生成されなくなるわけではなく、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の活動がこの期間では休止します。
発情が1度しか来ない犬種もいる
さて、これまでご紹介してきた犬の発情期に関する事ですが、犬種によってはその発情が1度しか訪れないと言われている犬種が居ます。
その犬種というのは、中央アフリカのコンゴを原産地とするバセンジーという犬種で、バセンジーは、通常の犬の発情と違い、オオカミと同時期(春)頃の、年に1度しか発情が見られないと言われています。
私も以前愛犬の散歩中にたまたまお目に掛かる機会があり、初めて実物のバセンジーを見たことがあるのですが、同じ犬でありながら、発情期だけで言ってしまえば、1度しか発情が見られないというのは不思議な感じでした。
人のように犬にも更年期はある?
人の場合、閉経が訪れる40代半ばから50代半ばで卵巣周期が不規則になって、ついには周期がなくなることを閉経と言いますが、それと同時期、またはその後に訪れやすくなるのが更年期ですよね。
犬の場合、明らかな更年期という症状は見受けられないものの、6~7歳以降になると発情周期が不規則となり、また周期も長くなる傾向にあると考えられています。
さらに、5~6歳よりも年を取ると産子数も減少することが分かっているため、更年期という概念はなくとも、発情期に対する変化は、高齢になるにつれて気にしてあげる必要があるでしょう。
まとめ
いかがでしたか?犬の発情周期は以前とは異なり、季節ではなく周期で発情を起こしている動物となりました。
犬では発情前期に血中の卵胞ホルモン(エストロゲン)量が増えることで、陰部から出血という形になりますが、人にはある月経ごとの内膜組織の更新が犬では存在しないため、犬で見られる子宮蓄膿症はそれも一つの大きな理由なのではないかと言われています。
筆者の愛犬は、初代の柴犬、2代目のシェルティー共々、子宮蓄膿症になった経験があり、シェルティーに関しては乳腺腫瘍も経験したことがあるため、3代目の柴犬はすでに避妊手術を行っております。
犬の発情期に関してはデリケートな問題であり、現在も避妊手術については賛否が分かれるものだと思います。
ですが、発情期間中のわんちゃんにはストレスなども生じるため、もしも繁殖を検討するのであれば、早めのうちに獣医師さんとの相談を十分にした上で、わんちゃんの「恋」の手助けをしてあげてください。
<参考書籍>
楽しい解剖学 ぼくとチョビの体のちがい 第2版
観察する目が変わる 動物学入門
<参考サイト>
繁殖に係る専門家ヒアリング結果
>https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/tekisei/h29_06/mat01_02.pdf
春季繁殖移行期について
>http://www.b-t-c.or.jp/btc_p300/btcn/btcn97/btcn097-04.pdf
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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