愛犬が「クシュン」と何度もくしゃみをしたり、鼻水を垂らしていると、どんな病気を想像するでしょうか。
実は犬にも「鼻炎」という病気があります。
菌への感染で起こることもありますが、歯が原因だったり異物が原因だったりと非常に多くの原因が考えられるため、早期発見が何よりも大事な病気です。
そこで今回は、「犬の鼻炎の原因」や「飼い主さんが気をつけるポイント」を解説するので、ぜひ愛犬の健康管理に役立ててくださいね。
犬に「鼻炎」ってあるの?
冒頭に少しお話ししましたが、犬にも「鼻炎」という病気があります。
鼻の粘膜が炎症を起こした状態のことをいい、粘膜が刺激をうけると「くしゃみ」や「鼻水」などの症状を引き起こします。
鼻炎が慢性化してしまうと、腫れによって鼻の中の管が塞がって、鼻水や異物、分泌物を外に排出できなくなり「副鼻腔炎(ふくびくうえん)」いわゆる蓄膿症を引き起こすこともあります。
鼻炎の原因は非常に多いだけでなく、症状が悪化すると改善まで時間がかかったり一生付き合っていかなければならない場合もあります。
そのため、慢性化させないように早めに異常に気づいて治療することが大切です。
犬の鼻炎「7つの原因」
では次に鼻炎の原因について見ていきましょう。
鼻炎の原因だと考えられていることを「7つ」ご紹介致します。
▼犬の鼻炎の「7つの原因」
①突発性鼻炎
➁腫瘍
➂真菌性鼻炎
④口蓋裂(こうがいれつ)
➄歯周病
⑥異物
➆アレルギー性鼻炎
①突発性鼻炎
突発性鼻炎は鼻炎を起こしている原因が特定できない鼻炎のことをいいます。
実は犬の鼻炎の原因の中で、この突発性鼻炎が一番多いと言われています。
犬猫の呼吸器科の専門医が行った調査によると、慢性的に鼻炎を起こしている犬80例のうち、突発性鼻炎は約21例(23.7%)でした。
▼犬の鼻炎の原因
突発性鼻炎は鼻が長い犬がかかりやすいといわれており、特に「ダックスフント」や「ウィペット」などが多いとされています。
➁腫瘍
鼻の中に腫瘍ができると、くしゃみや鼻水、鼻血などの症状が現れます。
腫瘍と聞くと「比較的珍しいのでは?」と思うかもしれませんが、先ほど紹介した「犬の鼻炎の原因」のグラフで腫瘍は第2位となっています。
鼻の中にできる腫瘍は悪性であることが多く、進行すると目や脳を圧迫したり、皮膚を突き破って表面に出てきたりします。
くしゃみや鼻水がひどくなってきた、鼻血がよく出るという場合は早めに検査を受けるようにしましょう。
➂真菌性鼻炎
真菌(カビ)が原因で鼻炎が起きることもあります。
特に「アスペルギルス」という菌が原因で発症することが多く、8~15歳の長頭種(鼻が長い犬)の発症が多いとされています。
感染すると炎症が起きたり組織の一部が壊死をしたりするので、大量の鼻血が見られます。
④口蓋裂(こうがいれつ)
口と鼻を隔てている場所を「口蓋(こうがい)」といいますが、その口蓋に穴が空き口と鼻が繋がった状態になっている病気を「口蓋裂」といいます。
遺伝などの先天的要因でなることもありますし、交通事故などの後天的要因で起きることもあります。
口の中と鼻が繋がっているため、食べ物や菌などの影響を受けやすく、鼻炎を発症することがあります。
「食事や水が鼻から出る」「食事のときにむせる」といった症状があったら、早めに検査を受けるようにしましょう。
➄歯周病
歯周病が悪化すると歯を支える骨まで溶けてしまい、口の中と鼻が貫通している状態になります。
そうすると食べ物や口の中の菌が鼻の方に移動してしまい、鼻炎を引き起こします。
ひどい場合は気管に食べ物が入って、肺炎を引き起こすこともあります。
歯みがきがなかなかできない、歯石がひどいという犬は、鼻炎を引き起こすリスクも高いということを知っておきましょう。
⑥異物
鼻の中に植物の破片や種、砂などか入ると鼻炎を引き起こすことがあります。
「そんなの鼻の中に入るかな?」と思うかもしれませんが、イネ科の植物は種が細かく散らばりますし、種の先端が鋭く尖っていることが多いです。
草むらに顔を突っこんだ拍子に、鼻に入ってしまう可能性は十分あるので、草むらが散歩コースにある場合は注意しましょう。
➆アレルギー性鼻炎
花粉やホコリなどのアレルゲンを吸って、鼻炎を引き起こすこともあります。
ただ犬の場合、アレルギー症状は鼻よりも皮膚や消化器に現れることの方が多いです。
涙や鼻水、くしゃみなどの症状が現れる子もいるので、花粉やほこりなどが原因で鼻炎を引き起こすことがあるということは覚えておきましょう。
犬が鼻炎になると起きる症状
それでは、犬が鼻炎にかかるとどんな症状が現れるのでしょうか。
原因によって現れる症状は多少異なりますが、共通する部分もあるので「この症状がでたら鼻炎かも」ということを覚えていきましょう。
▼鼻炎で現れる症状
・くしゃみ
・鼻水(ネバネバしたり黄色になる)
・涙が多い
・目ヤニがよく出る
・鼻血が出る
・食欲が落ちる
・呼吸が荒い
・顔や鼻に触られるのを嫌がる
鼻水は通常はサラサラとした水状ですが、鼻炎になるとネバネバになったり、色が黄色くなったり(膿の色)鼻血が出たりします。
また、炎症による腫れで目と鼻を繋いでいる管が塞がれると、涙が上手く流れず目の外にあふれて涙やけや目ヤニが増えることがあります。
鼻炎になると嗅覚が鈍くなるので、食欲低下が見られることがあります。
くしゃみや鼻水などに加えて、食欲低下や元気がないといった症状が見られたら、早めに動物病院で検査を受けましょう。
飼い主さんが気をつけるポイントは?
飼い主さんが日常生活で気をつけていくポイントは何があるでしょうか。
ポイントを「4つ」にまとめました。
▼日常生活で飼い主さんが気をつけるポイント
①早期発見
➁鼻の長い犬種や高齢犬は要注意
➂歯みがきをしっかりする
④タバコに注意する
①早期発見
鼻炎の原因は多岐にわたります。
鼻炎の原因が腫瘍や歯周病の場合、早期に治療に入らないと回復まで時間がかかったり、最悪命を落とすこともあります。
「なにかおかしい」と感じたら、早めに動物病院で診察を受けるようにしましょう。
➁鼻の長い犬種や高齢犬は要注意
頭短種に比べると長頭種は鼻炎にかかりやすいとされています。
また、高齢犬になると歯周病や腫瘍のリスクが高くなるので、長頭種の高齢犬は今までと違う行動が出ていないか、しっかり観察しておくことが大切です。
➂歯みがきをしっかりする
鼻炎の原因を見てみると、予防できる原因と予防できない原因かあるのがお分かり頂けたと思います。
歯周病による鼻炎は、歯みがきをすることである程度予防することができるので、歯のケアはしっかり行うようにしましょう。
④タバコに注意する
飼い主さんが喫煙者と非喫煙者の場合、非喫煙者に比べて喫煙者のペットは腫瘍の発生率が高くなると言われています。
タバコの煙は粘膜の炎症を引き起こす可能性があるので、犬の生活環境でタバコは吸わないようにしましょう(飼い主さんの服にも煙はつくので、できれば禁煙がベストです)。
愛犬がくしゃみをしていたり、鼻水を出していると「風邪かなぁ?」と考えがちですが、その症状の陰にいろんな原因が隠れていることがあります。
早期発見、早期治療がなによりも大事なので違和感を感じたら、すぐに診察を受けるようにしましょう。
今回ご紹介した内容をぜひ日常管理の参考にしてみてくださいね。
<参考書籍>
小動物獣医看護学 小動物看護の基本と実践ガイド 上・下巻 第3版
<参考URL>
上気道閉塞性疾患 相模が丘動物病院 呼吸器科 城下幸仁
>https://www.sagamigaoka-ac.com/wp-content/dr_file/pdf/training_111212.pdf
犬の鼻腔腫瘍 北海道大学動物医療センター外科/腫瘍診療科
>https://www.vetmed.hokudai.ac.jp/VMTH/content/files/department/oncology/HUVTH-6.pdf
<画像元>
Unsplash
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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