かつては「犬の役割は番犬」「犬は外で飼うもの」とされていましたが、時代がすすむにつれて室内で飼われる犬も増えてきました。
そのため、外で飼われている犬は「かわいそう」というお声もよく聞きます。
では、どんな環境であれば「外でも犬が適切に飼われている」と言えるのでしょうか?
今回は、「外飼いを選択する前に知っておきたいこと」や「外飼いのルール」について解説していくので、ぜひ最後までご覧ください。
「外飼い」されている犬の割合は?
最初に「犬の飼育環境の現状」について見ていきましょう。
アニコム損保が2年に1度実施している「どうぶつkokusei調査」によると、犬の「生活環境の割合」は下記のようになりました。
▼犬が普段生活している環境はどこですか? (有効回答数4103件)
・「屋内」のみ 84.3%
・「屋外」のみ 1.9%
・「屋内と屋外」 13.8%
8割以上の方が「屋内のみ(室内飼い)」で犬を飼育していると回答し、「屋外のみ(外飼い)」で飼育をしている方は「少数」ということがわかります。
一方で、「屋外と屋内(室内と外飼いの両方)」どちらも生活環境としている犬も1割ほどいるという結果になりました。
この結果を見ると、「犬は外で暮らす」という生活スタイルは、ほとんど見られなくなったということがわかりますね。
では、「外飼い」をすることに関して、世間の方はどのように感じているのでしょうか。
「犬の外飼い」に関する世間の声は?
「ペット保険相談サービス」を運営する「株式会社Wizleap」が行ったペットに関する意識調査によると、「犬を外で飼育すること」に関して下記のような結果となりました。
▼「犬を外で飼育すること」に対して、どのように感じますか? (調査人数:1,129人)
・犬を外で飼育するのは「賛成」 24%
・犬を外で飼育するのは「反対」 28%
・どちらともいえない 48%
僅差ではありますが 、「外飼いは反対」と考えている方が多いという結果になりました。
「賛成の方」と「反対の方」にそれぞれ意見を聞いてみると、下記のような回答が寄せられました。
・犬の祖先は外で暮らしていたから
・犬らしくのびのびと育つと思うから
・寒さ暑さなどを考えると、犬がかわいそう
・鳴き声や匂いなどで近所に迷惑がかかる
賛成意見の方は「犬らしくのびのびと育って欲しいから」と回答し、反対意見の方は「犬の暑さや寒さへの影響や近所への迷惑」を考慮して反対という意見を述べました。
室内の環境によっては走り回ることが難しいので、外の方がのびのび過ごせるのではという意見もわかるのですが、ひと昔前と違って現代は夏の暑さも冬の寒さも非常に厳しいため、犬にとって快適に過ごせる環境とはいえません。
それでは、「外飼い」という選択をする場合に、どのような事に配慮すれば犬にとって適切な環境を作ってあげられるでしょうか。
「犬の外飼い」をするなら、覚えておきたいルール
現在日本には、犬を外飼いをするときに守らなければならない決まりは定められておらず、適切に飼われているかをチェックする機関もありません。
ですが、「外で飼うために犬に何が必要か」を考えてあげないと、愛犬が辛い思いをしながら暮らすことになります。
海外では、屋外での犬の飼い方に基準を設けている国もあります。
日本にそのまま当てはめるのは難しいところもありますが、犬に適切な環境を作るうえで参考になることが多いので、今回はスウェーデンでの外飼いのルールを紹介させていただきます。
・繋いだ状態で飼わない(繋いだままにしておくのは2時間まで)
・犬の運動スペースは体高25cmの犬1匹に対して最低6㎡(たたみ3.2畳分ほど) ※1
・少なくとも1日2回は犬の様子をみる(犬の体調や年齢によって異なる)
・庭で放している場合も必ず外に出で排泄や社会活動(犬との触れ合い等)をさせる
・庭で放している場合も必ず全身運動の機会を設ける
・犬小屋は雨風をしのげるだけでなく、きちんと断熱されているもの
・環境エンリッチメント(犬の習性を満たすための工夫)を設ける
犬にとって何かに繋がれているというのは、それだけでストレスのかかる行為です。
外飼いを選択するのであれば、繋いだ状態で飼育するのは控えましょう。
また、スウェーデンでは犬の大きさによって、運動スペースの大きさも定められています。
▼※1 犬の運動スペースの最小面積(㎡)
体高(地面から犬の背中までの高さ)25cmの犬1頭につき6㎡、2頭だと8㎡必要
3頭目以降は1頭増えるごとに4㎡追加すること
先ほどもお話ししたように、現代は夏の暑さも冬の寒さも厳しいので、犬が休む犬小屋はきちんと断熱加工が施されているものを選び、夏は涼しく冬は暖かく過ごせる工夫をしてあげましょう。
また犬の好きな穴掘りをさせるために土の場所を設けるなど、環境エンリッチメント(犬の習性を満たすための工夫)も取り入れてあげるとよいでしょう。
日本には犬の飼い方をチェックする機関がないため、犬にとって良くない飼い方をしていても、だれも教えてくれません。
気づかないうちに愛犬を辛い目に合わせないように、外飼いをする場合は外飼いのルールを設けている国を参考にしながら、十分配慮して飼育環境を整えてあげてください。
「犬の外飼い」をするなら、知っておきたい5つのこと
今までの内容を見ていくと、外で飼っている分、室内飼い以上に気を配って環境を整えてあげる必要があることがお分かり頂けたと思います。
さらに、外飼いを選択するときに、知っておいて欲しいポイントが「5つ」あります。
①犬種や性格によっては外飼いに適さない
➁外飼いは感染症にさらされやすい
➂高齢になると室内飼いになる可能性
④外飼いは脱走や事故にあうリスクが高い
➄外で飼っていても散歩や社会活動は必要
①犬種や性格によっては外飼いに適さない
犬種によって自立心の強いタイプもいれば、常に家族と一緒に過ごしたいタイプもいます。
常に家族と一緒にいること好む犬種や性格なのに、外飼いで家族と離れることを強いられるとストレスが溜まり心の病気になってしまうことがあります。
きちんと愛犬の特性を理解したうえで、生活環境を決めましょう。
➁外飼いは感染症にさらされやすい
よく「外飼いの犬は寿命が短い」と聞きますね。
犬の寿命は健康管理や食事など色んな要因に左右されるので、一概に寿命が短くなるとは言えません。
しかし、室内飼いに比べると「寄生虫」や「菌」などの感染症にさらされるリスクはグッと高くなります。
外飼いをするという事は、室内飼いの子以上に健康管理や感染症対策に手をかけてあげなければいけないということになります。
➂高齢になると室内飼いになる可能性
年齢が高くなると暑さ寒さなど、環境の変化に敏感に反応し体調を崩しやすくなります。
そのため、若く元気な内は外飼いでも耐えられますが、高齢になると室内飼いの選択が必要になります。
その時は、室内で過ごす時のルール(室内トイレなど)をまた一から教えていく必要があります。
④外飼いは脱走や事故にあうリスクが高い
外で飼っている分、室内飼いの子よりも脱走のリスクは高くなります。
また、通行人との距離が近いので、盗難や悪意のあるイタズラを受ける可能性があります。
➄外で飼っていても散歩や社会活動は必要
庭で走り回っていれば「散歩はいらない」「散歩時間は短くて良い」と考える方もいるかもしれませんが、外に出て匂い嗅ぎをしたり、マーキングをしたり、社会活動(他の犬や人との交流など)の時間は、犬が充実した生活を送るうえで欠かせない事です。
散歩は欠かさず行きましょう(可能なら散歩1回につき1時間)。
外飼いというと、外に放置しっぱなしというイメージかもしれませんが、実際に犬を外で飼おうとすると室内飼い以上に生活環境や健康に気を遣う必要があるため、非常にハードルが高い飼い方です。
ただ、どうしても事情があって外飼いを選択したいという場合は、今回ご紹介した内容を参考にして生活環境を整えてあげてくださいね。
<参考URL>
犬の外飼いを取り巻く現状・法改正の提案
>https://www.animaldonation.org/awgs/report/tether/
犬の外飼いに反対が28%!変化する犬の飼育法と世間の声
>https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000052.000052686.html
犬の健康寿命延伸を目的とした「どうぶつkokusei調査」結果公表
>https://www.anicom-sompo.co.jp/news/2020/news_0200618.html
<画像元>
Unsplash
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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