蒸し暑い季節がやってきましたね。みなさん、愛犬を保湿してらっしゃいますか?
「え、犬にも保湿が必要なの?」「なんで夏に保湿が必要なの?」と思うかもしれませんが、夏はアトピーや膿皮症などの皮膚病が悪化しやすい時期ですし、皮膚病予防のためには保湿がとっても大切です。
夏こそ保湿を頑張った方がいい理由を一緒に学んでいきましょう!
どうして犬に保湿が必要なの?
人はお風呂や洗顔の後に化粧水やクリームで肌を保湿してあげるのが一般的ですが、犬ではあまり聞かないという方が多いのではないでしょうか。
でも人と同様、犬にとっても保湿はとっても重要です。
どうして「犬に保湿が必要なのか」を知るために、まずそもそも「乾燥がなぜ良くないのか」という事を知っておきましょう。
▼乾燥が皮膚にとって良くない3つの理由
①皮膚のバリア機能が下がる
➁感染症にかかりやすくなる
➂かゆみが発生しやすい
皮膚のバリア機能とは、花粉やダニなどのアレルゲンを皮膚の中に侵入させないようにしたり、体内の水分を外に逃がしにくくする働きのことです。
しかし皮膚が乾燥してしまうと、このバリア機能が下がってしまいます。
下の図を見るとわかりやすいですが、肌が乾燥すると細胞と細胞の間がスカスカになって、皮膚の中にいろんな物が侵入しやすくなっていますね。これが皮膚のバリア機能が下がってしまった状態です。
バリア機能が下がると花粉やダニや菌などか皮膚の中に侵入しやすくなり、感染症や炎症を起こしやすくなります。
また肌が乾燥すると、「かゆみ物質」を脳に伝達する神経が刺激を受けやすくなります。そのため、少しの刺激や接触でも「かゆみ」を感じやすくなります。
つまり、肌が乾燥すると良いことがひとつもないのです。それは人だけでなく、犬の皮膚も同様です。
そのため、乾燥を防ぎ肌のバリア機能を維持するためには、保湿がとっても重要ということなんですね。
犬にも保湿が必要なわけ、お分かりいただけけたでしょうか。
夏こそ犬に保湿が重要な理由
では、なぜ夏に保湿が重要なのでしょうか。
「夏は高温多湿でムシムシするし、保湿は必要ないのでは?」と思ってしまいますね。
しかし、高温多湿の環境は皮脂や汗の分泌が活発になります。その分泌物が蓄積されると、かゆみの原因になってしまいます。
また、高温多湿な環境は菌が増殖しやすいですし、アレルゲンになりやすい植物や虫の動きが活発になります。さらに紫外線も強くなりますし、クーラーで皮膚も乾燥しやすくなります。
つまり夏は皮膚トラブルが非常に起きやすい季節という事です。
実際に夏になると皮膚トラブルで動物病院を訪れる犬がグッと増えます。夏こそしっかり保湿をして、皮膚のバリア機能を整えてあげるという事が大切です。
アトピーや膿皮症の犬こそ保湿を!
さて、夏にも保湿がとても重要であるという事がわかりましたね。
特にアトピーや膿皮症などの皮膚トラブルをもっている犬や夏に皮膚が荒れやすい犬は保湿をしっかりと行いましょう。
高温多湿の夏はアトピーや膿皮症が悪化しやすい季節です。
犬のアトピー性皮膚炎の犬は、皮膚の「セラミド」が少ないことがわかっています。
「セラミド」は最初の画像にチラっと出てきていましたが、肌の細胞同士の隙間を満たして水分を繋ぎとめる役割をしています。
セラミドがしっかりある肌はバリア機能がしっかり働いているので、皮膚トラブルを起こしにくいです。しかし、アトピーの犬はこのセラミドが少ないので、皮膚のバリア機能が弱く肌も乾燥しがちです。
また、膿皮症(常在菌が増えて炎症を起こす皮膚病)の原因の多くは、アトピーの併発だと言われています。
そのため、アトピーの子も膿皮症の子もしっかり保湿を行うことが大切です。
皮膚トラブルを起こしていない犬も保湿は必要?
では、皮膚トラブルを起こしていない犬は保湿をしなくても良いのでしょうか?
人の乳児の研究ではありますが、保湿をしていた乳児と保湿をしていない乳児を比較した場合、保湿をしていた乳児の方がアトピーの発症率が低かったそうです。
先ほどもお話ししたように、保湿をすると乾燥を防ぎ肌のバリア機能を整えることができます。
保湿をしなくても皮膚トラブルを起こさない人もいますが、保湿をした方が肌のきめが整い、乾燥による肌トラブルを起こしにくい場合が多いですよね。
犬も同様に、乾燥していても特に皮膚トラブルを起こさない子もいますが、皮膚が弱い子やアトピーになりやすい犬種は、シャンプーの後などにしっかり保湿をしてあげた方が乾燥による皮膚トラブルの発症リスクを下げることができます。
特に皮膚トラブルがない犬でも、保湿をしてあげることをオススメします。
愛犬にどんな保湿剤を使えばいいの?
では、どのような保湿剤を使えば良いのでしょうか?
オススメは先ほどお話しした「セラミド」が含まれている保湿剤です。
夏になると蒸し暑いので、べたつきが少ないローションタイプやスプレータイプの製品が使いやすいと思います。最近は、入浴タイプの保湿剤(お湯に保湿剤を溶かして浸かる)もあります。
ただ皮脂が多い子の場合、皮脂が邪魔をしてうまくセラミドが皮膚に浸透しないということが起こります。
また、犬によって合う合わない、使っていい物ダメな物、飼い主さんが続けやすい続けにくいがあるので、保湿をしてみたいという場合は一度獣医師さんに相談して、愛犬にあった保湿剤を一緒に選んでもらうのが一番良いでしょう。
いかがでしたか?
まだまだ「犬に保湿が必要」というのは浸透していませんが、夏に皮膚トラブルを起こさない、悪化させないために今年の夏からしっかり保湿をしていきましょう!
<参考書籍>
アジア動物スキンケア検定 公式テキスト 動物スキンケア実践ガイド 岩﨑 利郎 (著)
<参考URL>
まだまだ知らない!効果を引きだすスキンケアのEBM
>https://www.qix.co.jp/seminar/backnumber/vol1/
新生児期からの保湿ケアとアトピー性皮膚炎
>https://www.wakodo.co.jp/ikuji/kankeisha/report/pdf/baby12.pdf
どうぶつの皮膚科耳科 @pet_skin インスタグラムライブ配信 どうして保湿が必要なのか?
<画像元>
Unsplash
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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