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「椎間板ヘルニア」ってどんな病気?原因や予防策はあるの?【動物看護師が解説】

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「犬の椎間板ヘルニア」という病気を聞いたことがあるでしょうか?

よく耳にする病気ではありますが「椎間板ってどこだろう」「どんな病気なのかイマイチわからない」という方も多いのではないでしょうか。

椎間板ヘルニアは「ダックスフント」や「トイプードル」「コーギー」など、小型犬によく見られる病気ですが、どんな犬でもかかる可能性がある病気です。

どの犬にも起こりえる病気だからこそ、しっかりと理解して予防策を取ることが大切ですね。

この機会に「犬の椎間板ヘルニア」について、しっかり学んでおきましょう。

「犬の椎間板ヘルニア」ってどんな病気?

「犬の椎間板ヘルニア」について知るために、まず「椎間板」とはどこにあるのか、を覚えていましょう。

下の図は「犬の骨格」を表した図です。

犬の背中に注目していただくと「頸椎(けいつい)」「胸椎(きょうつい)」「腰椎(ようつい)」「仙椎(せんつい)」という4つの「椎骨(ついこつ)」で構成されているのがわかりますね。

▼犬の骨格

この「椎骨」を縦にスッパリ切ると、下の図のような構造になっています。

「椎間板」という文字がでてきましたね(青色の脊髄の下にあるピンク色の部分です)。

体を動かす時に骨と骨だけではゴツゴツとぶつかってうまく動くことができません。

そのため、間に入ってクッションの役割をするものが必要になります。そのクッション役が「椎間板」です。

椎間板ヘルニアはこのクッション部分が飛び出してしまい、脊髄(図の青色の部分)を圧迫し神経に異常をきたしてしまう病気です。

「腰椎」がある腰の部分に起きることが多いですが、頭の重さがあるので「頸椎」がある首の部分もよくみられます。

椎間板ヘルニアがどんな病気なのか、なんとなくお分かり頂けたでしょうか。

「犬の椎間板ヘルニア」の原因は?

では次にこの「犬の椎間板ヘルニア」がどのような原因でおきてしまうのか、についてお話ししていきたいと思います。

先ほど「椎間板ヘルニア」は、クッション役である「椎間板」が飛び出てしまう病気とお話ししましたね。

この飛び出し方には「2つ」種類があります。

この飛び出し方の種類によって原因が変わってくるので、分けて解説していきますね。

犬の椎間板ヘルニアの種類①「ハンセンⅠ型」

急に「ハンセン」という言葉が出てきたので「え、何それ」と思うかもしれませんが、ヘルニアの種類を分類した方のお名前です。

さて、「椎間板」の部分をさらに細かく見ていくと、下の図のようになっています。

「椎間板」は薄いピンク色の「線維輪(せんいりん)」と呼ばれる部分と、濃いピンク色の「髄核(ずいかく)」と呼ばれるもので構成されています。

いちご大福を想像してもらうとわかりやすいでしょうか(いちごが髄核であんこが繊維輪)。

この「髄核」の部分が石のように硬くなってしまい、「繊維輪」を突き破って青色の脊椎を圧迫してしまうのが、ハンセンⅠ型という病気です。

先ほど例えたいちご大福であれば、いちごがすごく硬くなって、あんこの部分を突き破って外皮の白い部分を圧迫している状態ですね。

このハンセンⅠ型は「遺伝」が関係していると考えられており、特に「軟骨異栄養犬種」といわれる特定の犬種に多く発生しています。

▼「軟骨異栄養犬種」ってなに?
軟骨の形成不全で通常伸びるはずだった骨が伸びなくなり、骨が短くなってしまう犬種のことです。
ダックスフント・フレンチブルドッグ・コーギー・シーズーなど、足が短かったり頭が丸っこいなど身体的特徴がある犬種が当てはまります。

遺伝のため、年齢が若い内に発症することが多く、予兆なしに麻痺や痛みが発生することがあります。

犬の椎間板ヘルニアの種類➁「ハンセンⅡ型」

さて、Ⅱ型の方はどんな病気かというと「繊維輪」がパンパンに膨らんで脊髄を圧迫してしまう状態です。

下の図(右側)を見るとわかりやすいですが、薄ピンク色の部分が膨らんで青い脊髄を圧迫していますね。

このⅡ型は加齢によって椎間板が変性して起こると考えられており、どんな犬でも発症する可能性があります。

「犬の椎間板ヘルニア」の症状は?

では、犬が椎間板ヘルニアになると、どんな症状が出てくるのでしょうか。

椎間板が飛び出して圧迫する「脊髄」は、「手足の筋肉を動かす運動神経」や「手足に感覚を伝える知覚神経」「膀胱などの内臓の働きを調節する自律神経」の働きを担っています。

こうして見てみると、生きていくのに欠かせないほとんどの動作に脊髄が関係しているのがよくわかりますね。

この脊髄が圧迫されるので、椎間板ヘルニアの症状は「激しい痛み」と「麻痺」によって起きるものがほとんどです。

▼「犬の椎間板ヘルニア」の症状
・足がふらついて歩けない
・足をひきずって歩く
・尿を漏らしてしまう
・抱き上げようとすると嫌がる・痛がる
・背中を丸めてじっとしている
・動くのを嫌がる

また、ヘルニアが起こった場所によって、現れる症状は異なります。

頸椎(首の近く)でヘルニアが起こると前足と後足どちらにも麻痺がでてくることが多く、胸椎や腰椎(胸や腰の近く)でヘルニアが起こると、後足のみが動かなくなります。

「犬の椎間板ヘルニア」の予防策は?

今までの内容で「犬の椎間板ヘルニア」がどんな病気なのか、なにが原因で起こるのか、おわかりいただけたと思います。

この恐ろしい病気を予防する方法はないのでしょうか。

遺伝が原因となると、予防は難しいのではと思うかもしれませんが、日常生活の中で発症リスクをできるだけ下げる工夫はすることができます。

気を付けるポイントを「3つ」あげるので、ぜひ日常生活に取り入れてみてくださいね。

▼犬の椎間板ヘルニア予防のポイント
①床を滑らないようにする
➁肥満にならないようにする
➂激しい運動は控える

①床を滑らないようにする

フローリングのようにツルツル滑る床を歩いていると、滑らないようにと足や腰にぐっと力が入ります。

その状態で走ったり遊んだりすると、椎間板に大きく負担がかかってしまいます。

特に遊んでいるときは夢中になるので、犬自身で力の加減ができません。

床にマットを敷く、足裏の毛を短く切るなど、犬が滑りにくいように工夫をしてあげましょう。

➁肥満にならないようにする

肥満にさせないことも大切です。

特に胴が長い犬は脂肪がつくと、背中と足に大きく負担がかかります。

背骨の負担軽減のために、太らせないようにしましょう。

➂激しい運動は控える

高いところへのジャンプ、急に後足で立ちあがるなど、激しい運動は背骨全体に圧力がかかります。

犬の骨格を見るとわかりますが、犬の背骨は横にまっすぐ伸びているので、あまり上下の動きに対して強くありません。

ジャンプや後足で立ちあがるなどの運動は、腰をそった状態になるため椎間板に急激な圧がかかってしまいます。

何度も繰り返していると、椎間板だけでなく背中全体を痛める可能性もあるので、激しい運動(特に軟骨異栄養犬種)はなるべく控えるようにしましょう。

いかがでしたか?

椎間板ヘルニアは痛みも強く、急に進行する病気です。

日頃から予防策をしっかりととって、なにかおかしいと感じたらすぐに動物病院で診察を受けるようにしましょう。

<参考書籍>

小動物獣医看護学 小動物看護の基本と実践ガイド 上巻・下巻 西田 利穂 (翻訳), 石井 康夫 (翻訳), D.R.Lane B.Cooper

<参考URL>

軟骨異栄養性犬種における椎間板ヘルニア 鳥取大学農学部
>https://vth-tottori-u.jp/wp-content/uploads/2020/06/topics.vol_.98.pdf

<画像元>

Unsplash

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伊藤さん

伊藤さん

・倉敷芸術科学大学 生命動物科学科卒業
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手

やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。

大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。

愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。

「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。