皆さん、愛犬の耳掃除はどうしていますか?
実は「アイテム選び」を間違えたり「間違った耳掃除」をすることで、逆に耳の病気を引き起こしてしまうことがあるのです。
良かれと思って行動したことが逆効果にならないように、正しい知識を身に着けましょう!
犬に定期的な耳掃除は必要?
犬の耳掃除に関して100人の獣医師さんに行ったアンケートによると、約半数(54%)の獣医師さんが
■「定期的な耳掃除は必要ない」
■「どちらともいえない」
と回答しました。
こまめに耳掃除をしていた方はドキッとする結果ですね。
実は外耳炎や脂漏症(皮膚がべたつく病気)などのトラブルが出ていなければ、基本的に耳掃除はこまめにやる必要はないといわれています。
健康な耳には自浄作用といって、汚れを自分で押し出す働きがあります。
汚れは自然に出でくるので、汚れが気になったときにイヤークリーナーなどで湿らせた脱脂綿で優しく拭いてあげましょう。
耳の穴(垂直耳道)まで指をつっこむと、汚れを奥に押し込んだり刺激で皮膚を傷つけてしまうので、家での耳掃除は「耳介」までにしましょう。
犬の耳掃除の頻度は?
獣医師さん100人に耳掃除の頻度をたずねると、約半数(46%)の獣医師さんが
「固体や犬種によって耳掃除の頻度が異なるので要相談」
と答えました。
耳に異常がないかこまめにチェックするのは大切ですが、特にトラブルが出ていないのに頻繁に耳掃除をすることによって、逆に炎症などのトラブルをまねくことがあります。
汚れ具合によって頻度をあげたり下げたり、季節によって調整する(高温多湿な夏は多めなど)ことも必要なので、自己判断ではなく動物病院で頻度を相談しましょう。(皮膚・耳専門医がオススメ)
ちなみに・・・
「耳の汚れ=耳のトラブル」と思っていると病気を見逃すこともあります。
目視で汚れが確認できるのは耳の穴の入り口(外耳道)までです。
特に汚れが出ていなくても、耳をよく振ったり異臭がする場合は耳の奥(中耳や内耳)でトラブル(炎症や腫瘤など)が起きている可能性があります。
「耳の汚れがひどくなった」「耳を気にしている」という場合は、耳掃除の頻度をあげるのではなく、まず動物病院で診断を受けましょう。
◆ワンポイント アドバイス◆
耳のトラブルや汚れが出ている場合に、綺麗にお掃除されると元の状態がわからなくて、診察のとき困ってしまいます。(菌とかも少なくなるので)
お気遣いはありがたいのですが、動物病院に行くときは掃除前の状態でOKですよ!
注意が必要な犬の耳洗浄アイテム
わんちゃんの耳をきれいにする洗浄アイテムはいろいろありますね。
中には「耳の状態によっては使わない方がいい」「使う前に必ずの耳の状態を確認してほしい」アイテムもあります。
今回は3つご紹介します。
①アルコールが含まれている耳洗浄液
アルコールが入っている洗浄液は乾きが早く、べたつきが少ないのがメリットですね。
でも耳に炎症が起きていたり、傷がある場合にはとっても染みるため痛いです。
またアルコールに対して反応してしまう子の場合は、使い続けることによって症状がより悪化してしまいます。
アルコール入りの洗浄液を使う場合には、必ず傷や炎症が起きていないか獣医師さんにチェックしてもらってください(見えない場所で炎症が起きている場合もあります)。
➁イヤーパウダー
耳の中に入れてべたつきを取るアイテムですが、犬の耳専門医の間ではオススメしていません。
耳の中にパウダーが残ってしまうと刺激になる可能性が高く、パウダーを取り除くためには綿棒やガーゼで何度も耳の中をこする必要があります。
綿棒で耳の中を何度もこすると炎症を起こしたり、刺激で皮膚が分厚くなって耳の穴を塞いでしまったり、汚れを外に出す働きが衰える可能性が報告されています。
◆ワンポイント アドバイス◆
トリマーさんが耳毛を抜くときの滑り止めとしてイヤーパウダーを使うことがあります。
通気性をよくするための耳毛抜きですが、「抜く刺激で逆に外耳炎を引き起こす可能性」や「お手入れの苦手意識を犬に植え付けてしまう」として、最近では否定的な意見も見られます。抜くのはなくカットという方法もあるので、ぜひ検討してみてくださいね。
➂中耳毒性がある成分が含まれている
消毒薬や点耳薬の中に気をつけなければならない成分が入っている場合もあります。
抗菌薬の成分である「ゲンタマイシン」や消毒薬の「クロルヘキシジングルコン酸塩」は中耳に流れると毒性を与える危険性が報告されています。
耳ケアアイテムだけでなく、消毒用シャンプーの成分として含まれていることもあるので中耳に流れない注意しましょう。(耳の裏をすすぐときに注意!)
また使用する前に必ず成分をチェックしたり、獣医師さんに確認してから使用するようにしましょう。
ホームケアでまねく犬の外耳炎
愛犬の耳をこまめに手入れしている飼い主さんは真面目で、病気にならないようにたくさん愛情を注いている方だと思います。
しかし、間違ったホームケアを続けていると逆に外耳炎を引き起こしたり、なかなか治らない原因を作ってしまうこともあります。
今回は実際に起こったケースをご紹介します。
2つのケースを見るとわかるように、綿棒を使っての耳掃除や過度な耳掃除はかえって多くのトラブルを招きます。
外耳炎がなかなか良くならない原因の一つとして、間違ったホームケアや妄信的に点耳薬を使っていることが原因だったという事もあるのです。
耳科専門医からも、綿棒を使うことによって外耳炎を引き起こすリスクはたびたびクローズアップされています。
こまめに掃除をしないといけないほど耳垢が溜まるのであれば、お家でのケアではなく、獣医師さんが対応する範囲です。
「なかなか外耳炎が治らない」「外耳炎を繰り返す」という場合は、耳専門の獣医師さんに相談してみましょう。
犬の耳掃除の方法や頻度はいろんなサイトで紹介されていますが、中には正しくない情報も載っていますし、頻度もわんちゃんの状態によって異なります。
耳はトラブルが起きやすく、自宅でケアしやすい場所だからこそ、正しい知識を身に着けたいですね。
<参考文献>
・犬の耳掃除、自宅でやっても大丈夫? VetsEye
・中耳腔に投与された薬剤の安全性について 耳鼻臨床
・動物専門医が指摘する「間違った犬のケア」とは? 讀賣新聞
・汚れていないのに耳を振るのはなぜ? どうぶつの皮膚科・耳科
・クロルヘキシジングルコン酸塩液 医薬品インタビューフォー ム
http://med.nipro.co.jp/servlet/servlet.FileDownload?file=0155F000006ho4TQAQ
・綿棒を使って耳掃除は良くないの? 学芸大学ペットクリニック
・Video otoscopeを用いた治療が有効であったアメリカン・コッカー・スパニエルの耳道 閉塞の1例
<画像元>
illust STAMPO
Unsplash
写真AC
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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