夏になると暑さや熱中症対策で愛犬の毛を短くカットする方が多くなりますね。
普段と全く違う姿がかわいらしくて人気のカットですが、実はサマーカットはデメリットも多くあることをご存じでしょうか?
犬と人の皮膚の違い知ってる?
サマーカットの影響を理解するために、まず犬と人の皮膚の違いを知っておきましょう!
下図は人と犬の皮膚を比較した図です。
人に比べると犬の皮膚(表皮)は薄くて、人の3分の1ほどの厚さと言われています。つまり、とてもデリケートなんですね。そのデリケートな皮膚を守るために、犬にはたくさんの毛が生えています。
毛は暑さや寒さの調整だけでなく太陽の光を反射させたり、水をはじいたりと皮膚を守るバリア機能の役割があります。人のような皮膚の厚さがない代わりに、毛が皮膚を守る役割をはたしています。
過度なサマーカットが与える影響は?
人と犬の皮膚の違いを理解すると、なんとなくサマーカットのデメリットがわかってきますね。皮膚を守るための毛が短くなるので、皮膚に直接いろいろな刺激を受けることになります。
皮膚のバリア機能落ちる!
例えば、毛には水をはじく機能がありますが、短く刈ってしまうと皮膚に冷たさがダイレクトに伝わり冷えすぎてしまいます。
また、夏場は熱中症対策のためにクーラーを使いますね。私たちと同じで犬の皮膚も乾燥します。
毛があると多少乾燥から皮膚を守ることができますが、毛が短くなっていると防ぐことができません。乾燥した皮膚はアレルゲンや微生物が入りやすい状態になるので、皮膚病にかかるリスクが高くなります。
紫外線の影響をダイレクトに受ける!
紫外線は皮膚においてもっとも避けなければいけない刺激の一つだと言われています。
紫外線は殺菌作用やビタミンD合成促進などのメリットもありますが、過剰に浴びてしまうと皮膚炎やメラニン色素の沈着、発がん性のリスクがあります。
毛が黒色や茶色になるのは「メラニン色素」という物質の影響ですが、毛に含まれるメラニン色素には、皮膚や毛を紫外線から守る機能があります。その毛を短く切ってしまうと、紫外線の影響を皮膚がダイレクトに受けることになります。
特にメラニン色素の薄い白い毛の犬は紫外線の悪影響を受けやすい傾向にあります。
毛が生えてこなくなることも!
上の写真は毛を短くカットした後に、毛が生えてこなくなってしまった犬の写真です。
バリカンをかけた後に毛周期(毛が生えて抜け落ちるまでのサイクル)が止まってしまったり、生えてきた毛が硬くなるなどの毛質が変わることもあります。
詳しい原因は明らかになっていませんが、毛が短くなったことによる皮膚表面の温度変化や紫外線の影響ではないかと考えられています。
どの犬にも起こるリスクはありますが、ポメラニアンやスピッツなどの長毛種によくみられ、毛を短くするほどリスクが高くなるといわれています。
虫に刺されやすくなる!
蚊などの虫に刺されるときに、耳や鼻など毛が少ない箇所を刺されることが多いですが、毛を短くしてしまうと肌の露出している場所が増えるので虫に刺されやすくなります。
また、かゆくてひっかくときに毛のクッションがないので皮膚が傷つきやすくなります。
体調を崩すことも!
毛は体温調節の働きもあります。
毛を短くカットしてしまうと保温効果が薄くなるので、クーラーで体が冷えすぎてしまい、お腹の調子が悪くなったり、下痢をしてしまう可能性があります。
サマーカットのメリットは?
皮膚炎を起こしている場合は、こまめに薬浴をする必要があるため、お手入れが楽になります。
地肌が見えやすいので、湿疹や傷にも早めに気づくことができます。
また全身ではなく、老犬や介助が必要な犬のお尻やお腹まわりの毛を衛生面を保つために短くすることは有益です。
サマーカット以外の熱中症対策も
皮膚トラブルの面からもサマーカットは慎重に選択した方がいいというトリマーさんや獣医師さんが増えてきました。
中には、皮膚に直接日光を浴びることから熱中症対策としては、逆効果になるのではないかという獣医師さんもいます。
サマーカット以外にも地面の温度を気にする、クールバンダナやクールマットを敷く、肥満にさせないようにするなど熱中症対策はいろいろありますね。
換毛期になると通気性のいい夏の毛に生え変わるので、ブラッシングをこまめに行い毛をしっかりと取り除いてあげることも熱中症対策につながります。
犬のカットとして根付いてきたサマーカットですが、デメリットも多くあります。
暑さを解消するために良かれと思っていたことが、逆効果をまねく場合もあります。
サマーカットにする場合はトリマーさんや獣医師さんとよく話し合った上で、UVケアや洋服を着せるなどの対策を取ってあげましょうね。
<参考文献>
・飼い主向けセミナー 皮膚バリア機能とサマーカットのお話
・どうぶつの皮膚科 紫外線の影響
・アジア動物スキンケア検定 公式テキスト 動物スキンケア実践ガイド 岩﨑 利郎 (著)
・犬のトリミング処置後の皮膚トラブルについて【獣医皮膚科専門医が解説】
<画像元>
illust STAMPO
ICOOON MONO
Unsplash
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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