グレインフリーと聞くと、どんなイメージがありますか?おそらく健康に良いといったイメージを持っている方が多いと思います。
では、グレインフリーが健康に良いと言われる理由はなんでしょうか?
<目次>
グレインフリーってなに?
グレインフリーと聞くと、穀物がまったく入っていないイメージがありますが、実際には大豆やインゲン豆などの穀物が入っていてもグレインフリーとなります。
日本では、「グレイン=穀物」と訳されますが、グレインの語源である英語圏ではグレインは「イネ科作物の種子」のことを指しており、豆類や疑似穀類は別物という扱いになります。
そのためグレインフリーは、イネ科作物の種子が含まれないドッグフードということになります。しかし、メーカーによっては豆類や疑似穀類も含めてグレインフリーと名乗っている場合もあるため、原材料表記は確認するようにしましょう。
グレインフリーのペットフードが人気の理由は?
あるアンケートでは、飼い主さんがペットフード選びで重視するポイントの第1位はグルテンフリーであることでした。(グルテンは小麦のタンパク質の一種)
どうして穀物を控えることが人気になったのでしょうか?
ハッキリとした原因は定かではありませんが、グレインフリーが注目されるようになったと思われます。その理由をまとめてみました。
ほとんどの人は小麦を食べても問題ありませんが、小麦に含まれるグルテンに反応してしまう「セリアック病」という病気があります。その方たちのために「グルテンフリー」という食事療法が取り入れられました。
有名スポーツ選手やモデルが実践し、体質改善の兆しがみられたことから、注目され今ではヘルシーな食事方法としてセリアック病以外の人にも取り入れられています。
人で流行した食事方法や健康方法はペットにも取り入れられやすい傾向にあります。
グルテンフリーの話の一部が「小麦は避けた方がいい=グレインフリーは体に良い」となって広まり、ペットフードを選ぶときの選択肢に入るまでになったのでないでしょうか。
また、犬の食物アレルギーが認知されるようになったこと、飼い主さんの健康志向の高まり、ペットフードリコールの不安感もグレインフリーが良いフードであるとして、注目されるようになった原因の一つではないかと思います。
グレインフリーのペットフードは健康にいいの?
元々グレインフリーのドッグフードは、過剰に使われていた穀物を減らそうというドッグフード開発の反動でできたものだと言われています。確かに、穀物過剰のペットフードは栄養バランスが悪いため、皮膚病などの病気を招きかねませんが、グレインフリーだから健康にいいフードというわけではありません。
グレインフリーが健康に良いという理由として、「犬は穀物の消化が苦手」「穀物アレルギーへの予防」「肉食の犬に穀物は不要」をよく聞きますね。
犬はオオカミと祖先が同じことから、同じ食性だと思われていますが、わんちゃんは雑食でオオカミと食性に差もあります。
また、わんちゃんはオオカミよりも効率的に炭水化物(デンプン)を消化できる能力を持っており、ある論文では麦、トウモロコシなどのデンプンの消化率を調べたところ、99%以上消化されていたと報告されています。
穀物アレルギーと聞くと、穀物を避けたくなるのが心情です。しかし、食物アレルギーの調査では、症状が出やすかった食べ物の1位は穀物ではなく牛肉で、次に乳製品とチキンという結果でした。
食物アレルギーは食べ物だけでなく、食品添加物でも起こる可能性が示唆されており、似たようなタンパク源にも反応することから、アレルゲンになる食べ物を避けることは非常に難しいと言われています。食物アレルギーを起こしていないのに避けてしまうと、食材の幅が狭くなりかえって栄養バランスが悪くなってしまいます。
高タンパク質ペットフードのデメリット
穀物でエネルギーを賄えない分、グレインフリーはタンパク質が多くなりがちです。タンパク質が多いというと良いイメージがありますが、高タンパク質にはデメリットもあります。
タンパク質の含有量と攻撃性を調べた論文では、攻撃性を持つ犬に高タンパク質の食事を与えたところ、攻撃性が見られたそう。(トリプトファン・低タンパク質・高繊維食を与えると改善がみられた。)
またハーバード大学の研究では、腎臓の機能が低下している場合、高タンパク質の食事を取ると腎臓病の進行を加速させる可能性があると示唆しています。(特に赤身肉はリスクを上げやすい)
さらに、アメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)がペットフードと拡張型心筋症(心臓が大きくなってしまう病気)の関連性を調査したところ、多くのペットフード製品に「グレインフリー」の表示があり、バイソンやカンガルーなど珍しいタンパク源のフードもあったそうです。
グレインフリーと心臓病の因果関係はハッキリ証明されませんでしたが、食事と心臓病の関連性が疑われているという情報や遺伝的に拡張型心筋症になりやすいわんちゃんは知っておくと安心ですね。
グレインフリーのペットフードが向いているわんちゃんは?
では、どんなわんちゃんがグレインフリーのペッとフードを選んだ方がいいのでしょうか。
まず、小麦やトウモロコシなど、イネ科の穀物に食物アレルギーがあるわんちゃんはグレインフリーをお勧めします。
似た言葉にグルテンフリーがありますが、イネ科の穀物に食物アレルギーがある場合、グルテン以外のタンパク質や似ているタンパク質に反応してしまうので、獣医師さんに相談して一緒にグレインフリーのドッグフードを選んでもらいましょう。
また、てんかんを持っているわんちゃんやアイリッシュセッターは小麦に含まれるグルテンに対して、免疫反応を起こす場合があるためグルテンフリーやイネ科の穀物が使用されていないグレインフリーを検討しましょう。
今のところ、グレインフリーを食べた方が健康に良いといったエビデンス(科学的根拠)はでていません。
穀物に不安感を持っている方が、無理をして穀物入りのペットフードを選ぶ必要はありませんが、「○○はダメ!」「○○は良い!」という情報に出会ったとき、本当に正しい情報なのか見極めることが大切ですね。
<参考文献>
・The Impact of Protein Intake on Renal Function Decline in Women With Normal Renal Function or Mild Renal Insufficiency
・Long-Term Effects of High-Protein Diets on Renal Function
・High-protein diet is bad for kidney health: unleashing the taboo
・FDA Investigation into Potential Link between Certain Diets and Canine Dilated Cardiomyopathy
・Canine epileptoid cramping syndrome: a gluten-sensitive paroxysmal movement disorder – more than a gut feeling
・ドッグフードと犬の拡張型心筋症の関係 獣医師のドッグフード研究コラム
・ダイエットの誤解?「グルテンフリー」 吉原食糧株式会社
・食と問題行動 ペット栄養学会誌
<画像元>
illust STAMPO
シルエットデザイン
Icon rainbow
ICOOON MONO
Unsplash
Pixabay
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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