みなさんはどんなタイミングで愛犬にオヤツをあげていますか?ねだられるとついついあげてしまうという方も多いのではないでしょうか。でも実は、何かをした報酬にオヤツをもらう方が幸せって知ってましたか?
ついついあげるより幸せになる、オヤツのタイミングを動物看護師が解説します。
<目次>
愛犬にオヤツの与えるタイミング!5割がねだられたとき
上図は、飼い主さん403人(犬猫含む)に「どんな時にペットにオヤツを与えているか」というアンケートを取った結果です。約5割の飼い主さんが「ねだられたとき」や「寂しい思いをさせたとき」にオヤツをあげてしまうと答えています。
ついつい甘やかしてしまっている、罪悪感があるとオヤツを与えてしまう、という飼い主さんの心情がよみとれます。
しかし理想なのは、「なにかをした報酬としてオヤツをあたえること!」
それが愛犬の幸せにつながるのです。
報酬のオヤツが幸せにつながるのはなぜ?
ネズミを用いた面白い実験をご紹介します。
なんと、多くのネズミがボウルからではなく、わざわざレバーを押して食事を獲得したそうです。つまり、ただでごはんをもらうより、仕事をした報酬としてごはんをもらう方が好きという結果になりました。
これはコントラフリーローディング効果というもので、ネズミだけではなく犬や人、チンパンジーなど多くの動物にみられる行動だそうです(ネコは除く)。
何かをした方が脳は活性化されますし、その直後に報酬がもらえるので覚えもよくなります。
最近は動物園でも多く取り入れられており、餌を隠したり、トレーニングをした後に与えるなど考えて働かないと食べられないような工夫をしています。
愛犬を落ち着かせたいときにもオヤツは有効
愛犬がお店の中や外でワンワン吠え始めたら、みなさんはどうやって吠えることを止めさせますか?
オヤツは愛犬を落ち着かせる、気をそらせるときにも有効です。愛犬が吠え始めたら、吠えているものを遮るように飼い主さんが立って、オヤツをあげましょう。オヤツを2~3個あげたら、意識が飼い主さんの方に向きます。
そこで、おすわりや伏せなどの指示を出し、さらに別なことに意識を向けさせます。
愛犬家で知られるプーチン大統領は、連れていた秋田犬がインタビュー中に吠え始めたときに、オヤツを使って上手に落ち着かせていました。
オヤツの価値をアップさせよう!
たまにうちの子はオヤツが好きじゃない、オヤツをあげても喜ばないというお声も聞きます。
オヤツは一種類ではなく、何種類かを使い分けるのがオススメ。
例えば、トレーニングの時には一番好きなオヤツしか使わない、オヤツはローテーションで与えるなどすると、めったに食べられないのでオヤツの価値は高くなります。
人でも「コンビニのプリン」と「限定10個!有名パティシエが作ったこだわりプリン」だったら後者の方が興味をひきますね。
市販のオヤツが苦手、アレルギーがある場合は、ゆでたササミや蒸した野菜(ニンジンやサツマイモ)も立派なオヤツになります。
ついつい甘やかすは誤った愛情行動
愛犬の健康のために、ペットフードや食事の栄養管理について飼い主さんの関心が高い一方で、オヤツについてはつい甘やかしてしまう傾向がわかりました。
ある獣医師さんは「ペットが欲しがるからとむやみに与えると肥満になり、健康を害することに。今はよくても、あとで後悔することになる」と警鐘を鳴らしています。
それを表すように、ペットに対する甘やかし度と病気に関するデータでは、甘やかす度が高いほど病気になる割合が高くなっています。
甘やかす方法は人それぞれなので、病気と結びついていると一概にはいえません。
しかし、ねだられたらオヤツをあげる、嫌がったら歩かないで抱っこなどをしていると、体重増加と筋力不足になるため、甘やかしが悪影響を及ぼしている可能性はあります。
オヤツをコミュニケーションのひとつに
ある行動学者の先生は「犬には人間の3~5歳児くらいの知能がある、だからオヤツをあげるときはそのくらいの子供に置き換えて考えてほしい」と言っています。
確かに、ルールを決めずに甘やかしてオヤツをあげた子供と、きちんとルールを決めてお手伝いを頑張ったごほうびにオヤツをあげた子供だと大きな差が生まれそうですね。
トレーニングをがんばったごほうびにオヤツをあげれば、わんちゃんとコミュニケーションをとることもできます。オヤツをくれるから大好きな飼い主さんではなく、コミュニケーションがとれて自分が頑張ったときにごほうびをくれる飼い主さんを目指しましょう。
愛犬にかわいいお顔で見つめられると、ついついオヤツの手がのびますね。
そんな時は、与える前にちょっとトレーニングをはさんで、がんばったごほうびとしてオヤツをあげた方が愛犬の幸せ度がアップすることを思い出してくださいね!
<参考文献>
・日本のペットの幸福度調査~動物行動学者が読み解く、日本のペットライフ~
・衝撃!留守番時間が短い犬は、病気が多いって本当?「どうぶつkokusei調査」でわかったこと
・マイナビニュース 動物の中で苦労せず対価を得たいと思うのは猫だけ!? 獣医師が解説
・東洋経済新報社 東京大学薬学部教授 能力の低い人ほど、自分を「過大評価」する
・飼育ニホンザルにおけるコントラフリーローディングにもとづく採食エンリッチメントの検討
・ウマは働いて得る餌を好む? −−コントラフリーローディングに関する実験的検討
・BCC NEWS プーチン露大統領の秋田犬「ゆめ」がインタビューに登場
・ドッグ・トレーナーに必要な「犬に信頼される」テクニック
著者: ヴィベケ・S・リーセ / 著者・写真: 藤田 りか子
・動物看護のための動物行動学
著者/森裕司 武内ゆかり 監修/日本小動物獣医師会 動物看護師委員会
・イヌの動物行動学: 行動、進化、認知
アダム ミクロシ (著), ´Ad´am Mikl´osi (原著), 藪田 慎司 (翻訳), 森 貴久 (翻訳), 川島 美生 (翻訳), 中田 みどり (翻訳)
<画像元>
無料写真素材 写真AC
イラストAC
Icon rainbow
Pixabay
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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