人は甘いものばかり食べたり、歯みがきをしないと虫歯になってしまいます。ではわんちゃんも同じく虫歯になってしまうのでしょうか。今回はわんちゃんは虫歯になるのか解説いたします。
<目次>
どうして虫歯になるの?
虫歯は口内の細菌が糖分を分解して酸を作り出し、歯を溶かすことで起きます。糖分を摂取すると細菌が酸を作るので口内は酸性に傾きます。人の口内のPHは弱アルカリ性ですが、長時間酸性に傾いたままだと虫歯になりやすい環境になり、PHが5.5を下回ると歯が溶けはじめます。
わんちゃんは虫歯にならないの?
昔はわんちゃんは「虫歯にならない」と言われてきました。しかし近年では「虫歯になりにくいがなることもある」ということがわかってきました。わんちゃんが虫歯になりにくい理由は3つあります。
①PHがアルカリ性である
人の口の中と違い、わんちゃんの口の中はアルカリ性です。口の中が酸性になりづらいため、虫歯菌が繁殖しづらい環境だといわれています。
➁アミラーゼがない
人がお米を食べると甘いと感じるのは口の中に「アミラーゼ」という酵素があるためです。アミラーゼはデンプン(炭水化物)をブドウ糖に分解する働きがあります。わんちゃんはこのアミラーゼが唾液に含まれていません。細菌は糖を利用して酸を作り出しますが、糖がないため口の中が酸性に傾きにくいのです。
➂歯の形が人と異なる
人の歯は平らで歯に隙間がないため細菌がとどまりやすくなっています。一方わんちゃんは歯が尖っており歯の隙間が広いため細菌がとどまりにくくなっています。そのため、虫歯になる歯は平らに近い奥歯であることが多いです。
わんちゃんが虫歯になる原因は?
わんちゃんは虫歯になりにくい口内環境をしていますが、生活環境によって虫歯になる可能性があることがわかってきました。
糖分の多い食べ物を与え続けた場合、犬が虫歯になったという報告があります。慢性的に糖が多く含まれた食べ物、人の食べ物を与えていると虫歯になる可能性が高くなります。
また飼い主さんとの過度なスキンシップによって発症はしていなくても虫歯菌が移っているのではないかと考える獣医師さんもいます。
わんちゃんの虫歯の見つけ方
人の虫歯と同じように、酸で歯が溶けて小さなくぼみができます。くぼみに色素沈着が起きると黒く見える場合もあります。奥歯が虫歯になることが多いため、日ごろから口の中を見ていないと発見するのが非常に難しいです。
虫歯が進行し、神経や血管が集まっている部分にまで到達すると、痛みや神経過敏の症状が現れます。硬いものを噛むのを嫌がったり、手で何度も口を気にする素振りを見せるようになります。
わんちゃんの虫歯の治療方法
虫歯の状態が初期であれば人と同じく虫歯になった部分を削り取り、そこに充填剤を詰めて修復します。虫歯が進行して神経まで達している場合は、神経を除去する治療を行います。神経まで菌が到達していると炎症も引き起こすため、血管から菌が入り込み体の中で悪さをします。歯周組織がひどく破壊されている場合は、抜歯の必要があります。
虫歯を治療する場合、歯の治療に適した機器と知識が必要になるため歯科治療を専門とした動物病院をえらびましょう。
わんちゃんの歯や歯ぐきが黒いのは虫歯のせい?
わんちゃんの歯や歯ぐきに黒いものが見られるのは、虫歯や着色汚れのせいだけではありません。自分で判断するのは難しいため、気になる場合は動物病院で診察を受けると安心です。
変色歯
歯の色が他の歯と比べて灰色がかって見える場合には、神経が損傷して死んだ歯になっている可能性があります。人の場合は、食事をとることで歯が着色される内的要因が多いですが、わんちゃんの場合、歯が傷つくなどの外的要因で歯に変色が見られることが多いです。
硬すぎるものを噛むなど歯に強い力が加わると歯の神経が損傷し出血をします。さらに時間が経つと神経が壊死するため歯が灰色になり、最終的には黒く変色します。
歯の根元に細菌が入りこむと炎症を起こし、歯の周辺だけでなくあご全体に炎症が広がっていきます。
悪性黒色腫(メラノーマ)
犬種によっては生まれつき歯ぐきが黒いわんちゃんもいますが、黒くなった部分が膨らんでいたり、しこりのように硬くなっている場合は悪性黒色腫(メラノーマ)と呼ばれる皮膚腫瘍の可能性があります。皮膚と粘膜の接合した部分に発生することが多く、口腔内や歯ぐきの部分によくみられます。
初期ではほとんど症状が出ないため、えさをぽろぽろ落とす、口臭がする、遊んでいるおもちゃに血が付くなど進行して症状が現れて発見することが多いようです。
発病の原因はハッキリとわかっていませんが、転移スピードが速く再発が多いのが特徴です。メラノーマの転移する部位は肺が多く、肺に転移すると咳や呼吸困難などの症状が現れます。
メラノーマは悪性と良性がありますが見た目で判断することはできません。日頃からわんちゃんの口の中をよく見ておき、しこりなどを見つけたら早めに動物病院で診察することが大切です。
愛犬のためにお家でできること
虫歯の発生自体は少ないですが、生活環境によっては虫歯になってしまう可能性があります。糖を多く含む食べ物や人の食べ物を継続してわんちゃんに与えるのは控えましょう。
また、虫歯以外の病気の早期発見のために、歯みがきの習慣を身につけて、わんちゃんの口の中をこまめにチェックすることが大事ですね。
わんちゃんの歯みがきが苦手という方は上手にできる歯みがきの方法をまとめていますので、よろしければ参考にしてみてくださいね。
>【動物看護師が解説】愛犬の歯みがきが苦手なあなたへ 上手にできる3つのステップの記事はこちら
<参考文献>
イラストでみる犬の病気
編集 小野 憲一郎 今井 壯一 多川 政弘 安川 明男 後藤 直彰
国 内 1 次 診 療 動 物 病 院 26 施 設 に お け る犬と猫の腫瘍発生状況調査
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvma/69/8/69_468/_pdf
室 内 飼 育 小 型 犬 の 歯 垢 中Streptococcus属 と実 験 う蝕 に 関 す る研 究
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jdh1952/41/3/41_3_274/_pdf
<画像元>
無料写真素材 写真AC Pixabay
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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