今回は、ある日突然、愛犬ミクモ(ポメラニアン女の子)を襲った「膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)」について、お話ししてみたいと思います。
今年(平成30年)で11歳のミクモが1歳半くらいの出来事なので、なにぶん10年近く前のこと。記憶を辿りながらの記述になりますので、少しばかり不正確な部分もあるかもしれません。
写真も今と違って高解像度のものはなく、数も僅かですが、少しでも誰かの、特にこれから初めてワンちゃんを飼われる方々の参考や気づきになれば幸いです。
元気だった愛犬が突然「膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)」に!?
パピーの頃、多少お腹のトラブルはあったものの、それ以外はいたって健康で毎日元気に飛び跳ねていたミクモ。
それがある日、お散歩の途中で急に「キャイン!」と悲鳴をあげて固まってしまいました。ただ事ではない予感がして、すぐに当時かかりつけの病院へ。(かかりつけといっても、自宅から徒歩圏内にある動物病院ということで通っていました。)
診断結果は、「膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)」
初めて聞く病名でした。
聞けば、左膝関節のお皿が左右にズレてしまい、そのためお皿を左右から固定している靭帯も切れているかもしれない、とのことでした。
小型犬にはよくある症例だそうで、その先生によれば、「手術はするけれど一生障害が残ります。ケージから出せない生活になるかも。」という所見。
つまり、元気に走り回ることは、もうできない?まだ1歳半なのに??
目の前が真っ暗になるようで、泣きながら主人にメールしました。急いで帰ってきた主人も、痛さに怯えているミクモを抱きしめ、私の話を聞きながら泣いていました。
セカンドオピニオンの大切さ
本当にもう打つ手はないの?眠れない夜を過ごし、次の日から私は藁をもつかむ思いで自分なりに調べ始めました。
そして幸運なことに、私たちが暮らす名古屋に、その筋では有名な名医がいることを知ったのです!
その先生が院長を務める、「名古屋動物整形外科病院(当時名 ※現・名古屋動物医療センター)」は、遠方からも愛犬を連れて来院する方も多く(私たちが待ち時間に出会った人も北陸や九州から!)、とても評判が良い病院です。
先着順に一頭一頭、丁寧に診察し、飼い主さんが本当に納得する説明と治療法を提案するというスタンス。
朝早くから並んで待たなければなりませんし、順番が回ってきても検査で相当な時間がかかります。内容にもよるでしょうが、手術後は完全看護体制の入院です。
はっきり言えば、そのぶん費用も高額です。
でも、動物たちに苦痛や恐怖、ストレスを極力与えないという基本方針が素晴らしいと思い、私たちはセカンドオピニンを受けることにしました。
診断結果は同じ、でも希望は天地の差!
院長先生直々の診断の結果は、かかりつけの動物病院の獣医師と同じ「膝蓋骨脱臼」。
でも、まず説明の丁寧さが格段に違いました。参考として、その時にいただいたレントゲン写真を掲載します。
「左膝のお皿が完全に内側にズレています。お皿がはまっている骨の凹みが浅く、お皿が左右にズレやすく、それによってお皿を左右から引っ張って固定している靭帯も伸びてしまっている。」とのことでした。
手術内容は、お皿がはまる凹みを掘り下げ、伸びてゆるんだ左右の靭帯を短く切って縫合、それでもズレると判断すれば、お皿の両側に外れ防止のピンを打つ・・というものだったと記憶しています。
想像していた以上に緻密な手術でしたが、術後の見通しについて先生は、
「ワンちゃんにとっての幸せはたったの3つ。食べること、遊ぶこと、そして飼い主さんと一緒にいること。その1つを、1歳半で失うのは可哀想。大丈夫、僕はまた遊べるようになると思います。」
と力強く断言してくださいました!
地獄から天国です。
一度は「もう普通に生活はできないかも。」と言われた私たちにとって、その瞬間がどんなに嬉しかったことか。
そして、それほどの名医がたまたま地元にいらしたことの幸運に、感謝してもしきれません。
仮にその病院が九州や北海道にあったら、さすがに私たちの経済力では諦めるしかなかったでしょう。この幸運にかけよう、この先生にお任せしよう。私たちはその場で、手術日を一番近い休日に決めました。
人間並みの手術シーン
手術当日は見守る(立ち会う)ことができました。小さな体に酸素マスクやたくさんの管をつけて、院長先生はじめ数人がかりで行なわれた大手術。
ガラス越しに見る光景は痛々しくも、人間の手術と変わらないほどの高度さ、手厚さに感動したのを覚えています。
残念ながら主人は、費用を稼ぐべく休日出勤していて立ち会うことはできませんでしたが、術後の説明には間に合いました。
「手術はとても上手くいきました。ミクモちゃんは麻酔で眠っていて今夜は会えませんが、明日からは面会も可能です。急に曲がったり止まったり、膝に大きな負荷がかかる動きはいけませんが、普通に走ることはできるようになるでしょう。」
キレイにはまったお皿のレントゲンを見ながら先生のお話をお聞きし、数日ぶりにホッと胸をなでおろしました。
家族で頑張ったリハビリ生活
約1週間の入院を経て、我が家に戻ってきたミクモ。左足はギプス、そしてお腹あたりまで毛をキレイに剃られ、ピンク色の地肌があらわに。
見た目はもちろんですが、一番可哀想だったのはケージから出してあげられないこと。我が家は私が専業主婦なこともあり、ミクモとは常に一緒でお留守番もほとんどさせずにきました。
思えば恵まれているのですが、その分ミクモは甘えん坊に育ってしまい、ケージにはおトイレのときに入るだけ、それ以外は好きなときに好きな場所で過ごし、ゴハンも一緒、寝るときも夫婦のベッドで川の字でした。
それなのに、やっとお家に帰ってきたら狭いゲージに閉じ込められて、ママが目の前にいるのに出られない、パパが帰ってきても駆け寄れない。「なんで???」という顔でずっとコチラを見つめてきます。
吠えないよう躾けてきたこともあり、たまに「キューン」と寂しそうに鳴く声にも胸を締めつけられました。
でもでも、ここが正念場。すべてはまたミクモを元気に歩かせてあげるため。心を鬼にしながらも、できるだけケージの側で過ごしたり、話しかけたりしながら一日千秋の思いでリハビリに取り組みました。
また、先生のアドバイスもあり、ホームセンターで買い込んだタイルカーペットを滑りやすいフローリングの廊下やリビングに敷き詰めました。ミクモをゲージから出してあげられる日に向けて、少しでも安全で優しい住環境にするために。
奇跡の回復!
何度かの通院(その度に朝一から昼過ぎまで)を重ね、やがてギプスがとれ、半年が過ぎ、10ヶ月が過ぎ・・・
ツルツルだった足の毛も生えてきて、家の中、そして外へと出かけられるようになり、先生から待ちに待った完治の言葉をいただいたときの喜びは忘れません。
今にして思えば、育ち盛りで回復も早い年齢だったことが不幸中の幸いでした。そして、もう片方の右足も同じリスクをはらんでいる、ということを早い段階で知ることもでき、あらかじめ気をつけるようにもなりました。
他にもいいことがありました!
ケガをするまでは食が細く、フードを食べさせるのに一苦労だったのが、退院してからは人(犬)が変わったようにガツガツ食べるようになったんです。
きっと命の危険を感じ、生存本能に火が着いたのでしょうか(笑)。おかげで先生が驚くほど細かった四肢も見る見る逞しくなりました。まさに、ケガの功名です(笑)。
おかげさまで11歳になった今でも体重管理は万全ですが、普通に歩く、走るどころか、興奮してソファの座面と背もたれを三角飛びのように飛んだり跳ねたり。トリッキーな動きでいつもヒヤヒヤ、幸せな心配をさせられています。
「またケガをしたら自分もパパの懐も痛いのよ!」と心で叫びながら(笑)。改めて、こんなに完璧に治してくださった名古屋動物医療センター(現在)の院長先生、スタッフの方々に感謝したいです。
皆さんもぜひお考えください。
ちょっとした病気やケガならどこも大差ないと思いますが、ある程度大きな場合はセカンドオピニオンを受けることをおすすめします。かけがえのない家族のその後が大きく変わるかもしれません。
それと、ワンちゃんたちは我慢強いらしく、こちらが病気やケガに気づけていないこともあるそうです。今回お話させていただいた「膝蓋骨脱臼」も、ワンちゃんによっては自分でストレッチしてハメてしまう子もいるとか。
歩き方やおトイレのポーズなどが少しでも不自然なときは、気にかけてあげてください。ウチのミクモは極端にデリケートで臆病なので、嫌でも異変に気づいてしまうのですが(笑)。
ちょっと笑えるあとがき
以前のかかりつけ動物病院にはそれっきり行っていませんが、狂犬病の予防接種の会場で顔を会わせたことがあります。
元気に歩いてくるミクモを見て気まずそうです(こっちこそ!)。
我が家の愛犬ミクモを救ってくださった、
名古屋動物医療センター(旧:名古屋動物整形外科病院)の公式ページはこちら
現在は入院中の面会はできないようです。ワンちゃんによっては、飼い主さんと会うことで里心がつき、「帰りたいのに帰れない。」というストレスが大きくなるからとか。寂しいですが、これも愛犬のためと我慢するしかないですね。
ミクモも2度目の大ケガで再びお世話になった時は、検査に入った瞬間から問答無用、そのまま退院までの2週間近く会わせてもらえませんでした。以前は面会できたので、心の準備ができていなくて焦りました(笑)。
ところで2度目の大ケガとは?懲りないミクモの失敗談は、また別の機会に。
真顔寄りポメラニアン シニア組。
人間社会で居心地よく暮らせるように躾てきました。いつでもどこでも一緒です。
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