梅雨の季節が本格化してくると、色鮮やかに咲き誇るのが紫陽花、ですね。ただ、この紫陽花という植物には、愛犬が口にしてしまうと食中毒を起こしてしまう『毒』があるのをご存知ですか?
プレゼントやお祭りなどでも親しまれる紫陽花の『毒』成分って?万が一愛犬が誤食してしまった時に起こる症状や致死量、対処法についてまとめました。
<目次>
梅雨の定番【紫陽花】による食中毒事例
母の日のプレゼントや時期的なものでお祭りが開催されることの多い【紫陽花】ですが、紫陽花には犬にはもちろん、人にとっても有毒となってしまう『毒』成分が含まれています。
驚くことに、2008(平成20)年の6月には、茨城県つくば市の飲食店及び大阪市の居酒屋で、料理に添えられていた紫陽花の葉を誤って食べたことによる食中毒の症例が2例報告されています。
茨城県つくば市の飲食店で起こった症例では、料理に添えられた紫陽花の葉を食べた10人中8人が食後30分から吐き気・めまいなどの症状に見舞われた事例が一つ。
そして、大阪市の居酒屋で起こった症例では、男性一名がだし巻き卵の下に敷かれた紫陽花の葉を食べ40分後に嘔吐や顔面紅潮といった症状に見舞われた事例が一つ報告されています。
どちらの例も重篤にはならずに2日~3日以内には全員問題なく回復した、とのことですが、犬だけではなく、人にとっても【紫陽花】は毒性を示す植物というのは驚きですよね。
ただ、こういった事例が起こってしまった背景には、料理の飾り用として紫陽花の葉や花が市場に流通しているところにあるようで、パッと見では紫陽花の葉は大葉(青じそ)と大差ないほどの見た目をしていることから、中毒症状を呈してしまった人たちも、何ら疑うことなく紫陽花の葉を大葉(青じそ)と思って口にした結果、起こってしまったと言わざるを得ないように思えます。
紫陽花に含まれる『毒』って?
紫陽花に主に含まれている『毒』は、青酸配糖体(アミグダリン)と言われる、植物ではごくありふれた『毒』です。
紫陽花は葉・茎・つぼみ・根など、ほぼすべての部位にこの青酸配糖体という成分を含んでおり、まるで梅雨の象徴とでも言わんばかりにセットにされることが多いカタツムリでさえも、基本的には紫陽花の葉を食すことはないとされています。
一説では、紫陽花に含まれる『毒』、青酸配糖体の毒性が発揮されるのは酸と混ざった時のみ、とされているようで、仮に万が一紫陽花の葉を食べているカタツムリが居たとしても、人とは違って強いアルカリ性の消化液を出せるカタツムリには、あまり毒性は強くないとのことです。
けれど、犬の胃液酸性pHは大体1~2の強酸性、人の胃液酸性pHでも大体2~4の弱酸性とされている状態では、紫陽花の葉というのは『毒』で、上記でもお伝えしましたが、飲食店などで飾りとして添えられている葉については、一度店員さんなどに確認を取った方が安全です。
また、この季節にもなると、愛犬とも一緒に楽しめる紫陽花祭りなどが開催されますが、そういった際のお出掛けには、愛犬が誤って紫陽花の葉を口にしないように気を付けてあげることを心掛けてください。
愛犬が紫陽花を誤食してしまった時の症状
十分に気を付けていたのに、愛犬が誤って紫陽花の葉を誤食してしまった時に考えられる症状にはどういったものがあるのでしょう?
一般的に下記のような症状が挙げられます。
【愛犬が紫陽花を誤食した時の症状】
・下痢や嘔吐
・麻痺や痙攣
・呼吸困難
・昏睡状態
愛犬が誤って紫陽花を食べてしまった時の主な症状としては、消化器症状及び神経系障害などですが、厚生労働省で報告されている現況では、紫陽花に含まれる青酸配糖体も、品種によって成分、含量にはかなりの差があるとされていて、「毒性成分は未だ明らかではない」との見解です。
そのため、品種によっては同じ紫陽花でも症状が出る場合もあれば、出ない場合もあるのが実情でしょう。
また、紫陽花中毒に関連すると思われる甘茶(アマチャ)にも、同様の中毒症状が、2009(平成21)年に岐阜県岐南市にて症例報告が一つあり、2010(平成22)年に神奈川県南足柄市にて症例報告が一つあります。
甘茶(アマチャ)については、いずれも花祭りで振舞われた甘茶を使ったお茶を飲んだことで、園児119人中28人が嘔吐、小学1年生99人中45人が悪心などの症状を訴えたと言います。
ただし、この症例に関しては濃い甘茶に限っているようで、普通に入れた甘茶を飲む分には、それほど危険性はないとされています。
とはいえ、甘茶(アマチャ)ではない紫陽花についていえば、安易に愛犬を近づけるのは危険であり、実際に紫陽花の葉によって食中毒が人で起きている事例がある以上、例えば「絵になるから」という理由で愛犬と紫陽花の2ショットを写真に収める時には、十分に注意する必要があります。
愛犬が紫陽花を誤食した時の致死量
では、どれほどの量を愛犬が口にしてしまったら、致死量になってしまうのでしょうか?
紫陽花中毒の症例として挙げられるのが、前述した2件の人の紫陽花中毒なので、明確な致死量というのは示されていないに等しいとは思いますが、しかし、あくまでも人で起きた症例ではおおむね0.5mg~3mg/kg程だと言われています。
また、具体的な枚数としては、2件の症例の内、茨城県の飲食店で起こった1件では、紫陽花の葉はその時2枚添えられていた、との報告もなされていることから、たったの2枚であっても人では嘔吐やめまいなどの食中毒を起こす危険性があることが分かります。
大量に食べなければ、どのような食材であっても危険性はそこまで大きくはないかもしれませんが、やはり人と犬とでは体格差はもちろんの事、体重についても全く違うため、紫陽花の葉1/4であったとしても油断は出来ません。
特に好奇心旺盛な性格をしたワンちゃんの場合には、「一瞬目を離した隙に口にしていた!」といった事も珍しくありません。
そのため、例え大型犬であったとしても、体重に比例して紫陽花を食べた量が致死量以下だからと安心せず、万が一の事も考えて必ず動物病院で診察してもらうように気を付けてあげてください。
もしも愛犬が紫陽花を誤食してしまったら?
散歩中、紫陽花祭り、プレゼントでもらった紫陽花などを誤って愛犬が口にしてしまった時の対処法としては、まずは口の中に紫陽花の葉や花などが残っていないか確認しましょう。
その上で、残っているようならすぐに取り出し、水で紫陽花に触れた部分を洗い流しましょう。
ただ、その際注意が必要なのは、愛犬の行動です。
犬という生き物は、食べ物に対して攻撃性を示すことがあり、自分が口にしたものを飼い主さんが無理やり取り除こうとすると、その咄嗟の行動に驚いてそのまま紫陽花を飲み込んでしまったり、手を齧ってしまったりする場合があります。
その結果、実際に飲み込んで中毒症状が出てしまう危険性や齧られて痛い思いをしてしまう危険性もあるので、もしも愛犬に近寄った際に、唸り声を上げて口に入れた紫陽花が取られるのに抵抗を示すようなら、その時には無理に取り上げようとせず、症状の有無にかかわらず動物病院を受診してください。
一般的に、動物病院で行われる処置としては胃洗浄や催吐剤によって愛犬が口にした紫陽花を吐き出させる処置が行われるはずですが、迅速な処置が出来るようにするためにも、愛犬が紫陽花を食べてしまった状況や時間などを細かく説明出来るように心掛けましょう。
まとめ
いかがでしたか?
紫陽花は育てることが簡単な植物ともされているため、ガーデニングをされている飼い主さんは、育てている人も多いと思います。
犬は人と違って気になったものは口にしたり、咥えてみたり、嗅いだりしてその物自体を確認します。
そのため、紫陽花を育てる時や紫陽花祭りに愛犬と行く時、散歩道など、愛犬が誤って紫陽花を口にしないように気を付けてあげてくださいね。
<参考サイト>
自然毒のリスクプロファイル:高等植物:アジサイ|厚生労働省
>https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082116.html
自然毒のリスクプロファイル:高等植物:アマチャ|厚生労働省
>https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082119.html
アジサイの葉の誤食による青酸中毒事件 顛末記|IME 特定非営利活動法人 医療教育研究所
>https://www.ime.or.jp/zakki/zakki013.html
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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