私たち人にも存在する指紋は、人ごと、指ごとに異なっており、一生その模様は変わらないと言われています。
では、犬ではどうでしょう?
「指紋」と聞くと真っ先に思い浮かぶのは犬の肉球のように思いがちですが、実は犬の指紋と呼べる場所は違うところに存在します。
今回は、犬の嗅覚の凄さや、人の指紋と同じ効果を発揮する「犬の鼻紋」について、また、鼻紋認証によって個体識別が出来るアプリについてご紹介します。
<目次>
犬の嗅覚は人の5,000倍から1億倍以上
それでは、まずは今ではもうほぼ当たり前の知識とも言える犬の嗅覚のおさらいをしていきましょう。
犬の嗅覚は、聴覚、平衡感覚、視覚、味覚、皮膚感覚といった様々な感覚の内、その40%以上を占める器官だと言われています。
その能力は酢酸や硫酸を1000万分の1に、また、塩酸や乳酸を100万分の1に希釈しても嗅ぎ分けられてしまうと言われるほど、犬の嗅覚はとても優れています。
一般的に鼻腔内に存在する嗅上皮(においを感じ取る細胞)は、人での合計表面積は約5㎠の1円玉くらいに対し、犬では約18~150㎠ほどあるとされていて、最高の150㎠とは、1,000円札一枚分の大きさに匹敵するほどの面積と言われています。
嗅覚の能力を左右する犬の鼻
ここまで優れている犬の鼻ですが、どんな時でも匂いに敏感とは限らないようです。
というのも、犬の鼻というのは外界の条件および、犬自身の気持ちによっても左右されてしまうとされているから。
例えば、風や雨や日光といった外界の条件では、強風であったり雨が降った後だったりすると、今まであった匂いが洗い流されてしまって本来発揮できるだけの嗅覚が発揮されない場合があります。
そしてもう一つの犬の気持ちによる条件では、仮に犬が熟睡している場合、例え大好物の物を鼻先に持って行ってもその匂いには気が付かない場合があるということです。
匂いに敏感な犬であっても、犬自身がその匂いを嗅ぎ取ろうと意識しなければ、匂いに気づけないことがあるなんて、なんとも面白い事実ではないでしょうか?
そもそも鼻紋って何?
では、ここからは嗅覚がそれほどまでに優れている犬の鼻に存在する鼻紋について、ご紹介します。
そもそも鼻紋という言葉が使われるようになったのは、一般的に生まれつき和牛などが持つ鼻のしわの模様についてでした。
牛では血統などの観点から個体の識別や証明に利用されるため、仔牛の頃から鼻紋を採取し、個体管理や登録などに用いられていました。
一方で、こういった鼻紋は、牛だけではなく犬や猫にも存在することが既に知られており、すでにアメリカなどのペット先進国においては、犬の鼻紋認証機器開発は随分前から進められていたと言います。
犬の肉球に“指紋”はないの?
様々な大きさの肉球を持つ犬ですが、残念ながら人が持つ指紋と似たようなものは、犬の肉球には存在しません。
そのため、以前筆者の3代目柴犬と散歩中、公園内で2ショットを撮ろうと思ったら愛犬自身がシャッターを押して撮れた写真というのはありましたが、一見指紋と関係しそうなスマホのタッチスクリーンも、これは実は、微弱電流によって作動するものなので指紋とは関係がないのです。
しかし、前述したとおり、犬の肉球に人と同じような指紋はないものの、鼻に存在する鼻紋によって、それぞれの個性や個体認証には正確性があるとされているのはとても重要なことで、研究によってもそれが証明されています。
1994年にはすでに研究されていた犬の鼻紋
犬の鼻紋は、1994年に『犬の識別方法としての鼻紋(Nose prints as a method of identification in dogs)』という季刊によって、犬の鼻には人の指紋同様個体特有の模様が確認できたことが記されています。
その中で紹介されている鼻紋採取の方法は至って簡単で、「犬の鼻を綿棒などで乾燥させたのち、皮膚にインクを染み込ませ、白い厚紙で鼻紋を写し取る」といったもの。
この鼻紋採取は、現在年々世界的規模で飼養頭数が増えている愛犬や愛猫に対して、首輪に着けるドッグタグや体の中に埋め込むマイクロチップなどは最悪外れてしまったり抜き取られてしまったりする恐れがあることを指摘し、それに対する有用性かつ正確性があることを主張したものでした。
日本初!鼻紋認証アプリで「迷い犬0」⁉
さて、犬の鼻紋が人の指紋と同様にそれぞれ違うことは研究によって証明されましたが、長年日本において、鼻紋による個体識別などは使用されてきませんでした。
しかし近年、AIが犬の鼻紋を解析し、個体識別が出来るテストアプリがリリースされました。このアプリは東京都中央区を本社に置く株式会社S’more(URL: https://www.smore-pets.com/)という会社が開発し、犬の鼻をスマホの専用アプリでスキャンするだけで犬を特定、飼い主に連絡が出来るように制作されていると言います。
現在、このアプリはテスト版がリリースされている状態ということですが、アプリ自体の使用説明や現在のアプリの進行情報など、随時公式Instagram(URL:https://www.instagram.com/nose.id_official/)などで公開しているようなので、気になる方はご覧になってみてください。
また、この会社とは別に株式会社NGA(URL: https://nga-x.com/)という会社でも自社が開発・運営するペット総合アプリ「Pet」にて、独自の鼻紋認証技術を実装したペット鼻紋認証をリリースするなど、続々と鼻紋によるアプリが登場しています。
これらのアプリは災害時や散歩の時など、万一飼い主とはぐれてしまった際に、鼻紋とデータベース化された情報から愛犬を特定するというものになっており、ドッグタグやマイクロチップだけでは情報を共有しづらい面を、このアプリは補ってくれるものになっています。
【NoseID(株式会社S’more)ダウンロードURL】
IOS:https://apps.apple.com/jp/app/nose-id/id1621677938
Android:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.smore.noseid
【Pet(株式会社NGA)ダウンロードURL】
IOS:https://apps.apple.com/jp/app/pet/id1560912975
Android:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.nga.pet
まとめ
いかがでしたか?
今では新しく迎える犬や猫には必ずマイクロチップを付けることが販売業者には義務付けられましたが、それでもやはり、つい最近ではブリーダーがマイクロチップ未装着のまま柴犬を輸出しようとした事例があるなど、犬の安全については万全ではありません。
だとすれば、人と同じような指紋が犬の鼻に存在する鼻紋は、隠しようもなく、偽装も出来ない証明としてアプリなどで活用できます。
大事な愛犬を守る上で、とても有効なツールの一つとして、鼻紋認証アプリ、使ってみてはいかがでしょうか?
<参考書籍>
犬の生態
観察する目が変わる 動物学入門
<参考サイト>
子牛の鼻紋採取|独立行政法人家畜改良センター鳥取牧場
>http://www.nlbc.go.jp/tottori/shortstory/bimon/
Nose prints as a method of identification in dogs|Veterinary Quarterly
>https://www.tandfonline.com/doi/pdf/10.1080/01652176.1994.9694497
日本初「犬の鼻紋」をAIが解析し個体識別するNoseIDアプリ β版リリース
>https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000083563.html
NGA、アプリ『Pet』に日本初のペット用鼻紋認証特許技術の応用を実現
>https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000083628.html
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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